世界一のシングルオリジンコーヒーを発掘する「COFFEE COLLECTION WORLD DISCOVER」。 2022年1月、予選を勝ち進んだトップ10のコーヒーを、世界で活躍するジャッジが審査する決勝が行われました。その結果を発表! トップ5に選ばれたロースターにインタビューを行い、審査会に提出した豆の魅力や選定理由、焙煎や味作りでこだわったこと、自身が考える美味しいコーヒーの定義などを伺いました。
<INDEX>
【優勝】ABOUT US COFFEE
エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル >>
【2位】nichi nichi coffee
エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル >>
【3位】Coffee Wrights
エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル >>
【4位】Prism coffee works
コロンビア/パライソ92/ビール酵母発酵 >>
【5位】Philocoffea
TOMODACHI エチオピア/ウェイト農園/テツ・プロセス >>
【優勝】ABOUT US COFFEE
エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル
ロースター:澤野井 泰成さん
◆「エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル」を選んだ理由を教えてください
今回の審査会のレギュレーションで唯一明確に定められていたのはCOEのカッピングフォームをスコアリングに使用することでした。
マウスフィール、スイートネス、アフターテイストは、焙煎の工夫次第でフレーバーとアシディティを少し損なうことを許容すれば若干操作ができます。一方で、アシディティとフレーバーに関しては、どう足掻いても生豆のポテンシャルに頼らざるをえないと思っています。それらを加味してスコアシートから逆算し、自分が提出できるコーヒーの中から一番得点が高くなるであろう豆を選びました。
結果、フレーバーとアシディティが高く、ナチュラルプロセスながらもクリーンカップの印象をうけたニグセ・ゲメダさんのコーヒーを出すことが最善だと判断しました。
あとから思い返した話ですが、僕は25歳くらいまではブラックコーヒーが苦手で敬遠していました。そんな中でブラックコーヒーを好きになったのは、大阪のLiLo Coffee Roastersで飲んだエチオピア・アリーチャ・ナチュラルでした。この審査会において、自分がコーヒーの世界に足を踏み入れるきっかけとなった、エチオピアの最高峰の豆で評価を頂けたことは本当に感慨深いです。
◆「エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル」のフレバーコメント
エチオピアのトップクオリティの王道らしい、とてもコンプレックスなコーヒーです。フローラルで複雑なベリー感がある一方、ナチュラルプロセスながらも非常にクリーンカップです。
他のエチオピア・ナチュラルよりもみずみずしさがあり、そこから個人的にはメロンやマスカットのようなニュアンスも感じとることができました。またスイートネスが高く、しっかりとしたライプ感(完熟感)や蜂蜜のような甘さもあります。
カッピングでは冷めるにつれて、より複雑かつ明確にテイストを感じられ、長く楽しめるコーヒーという印象を受けました。生産者さんの努力の結晶とテロワールが素晴らしいコーヒーです。
◆澤野井さんが考える美味しいコーヒーの定義とは?
美味しいコーヒーの定義はあまり持っていません。僕自身、コーヒー業界歴が浅いことも一因しているかもしれませんが、これまで勤めていたファッション業界のような目線で考えると“美味しさの定義や流行り”が変わる可能性もあると思っています。
また、“自分が美味しいと思うコーヒー”を誰もが美味しいと思うとは限りません。そういったことから、美味しいコーヒーを定義づけるよりも、常に “美味しいコーヒー”が何なのかにアンテナを張ることの方が重要だと思っています。
店名の「ABOUT US 」とは直訳すると「私たちについて」という意味です。スペシャルティコーヒーを扱うということはさまざまな生産者さんを紹介するということ。その生産者さんたちも含めて “US” であり、セレクトショップ的な意味合いも含んでいます。「ABOUT US 」という店名には本当にたくさんの意味とメッセージを込めているのですが、“私たち=多様性”ととらえ、多様性のあるコーヒーを認めることも、店として掲げているテーマのひとつです。
そんな中でしいてあげるとすれば、以下の2点です。
・抽出物としての濃度感を感じられること
・飲み込んだ後に水が欲しくならない液体であること(フレーバーや酸質、濃度感など、個人の好みとの差異でうまれるネガティブはのぞく)
◆COFFEE COLLECTION WORLD DISCOVERにむけて、焙煎や味作りでこだわったこと、対策したことなどあれば教えてください
対策の第一は生豆の選定でした。審査会である以上、順位をつけられるので、自分の好みは一旦横において、スコアが高くなる生豆を選定することが第一でした。その結果、自分の好きなエチオピアで挑んでいるので、結局自分の好みなのかもしれませんが(笑)。
そのうえで対策したことは “ネガティブをなるべく出さないこと” と “実際に自分で点数を付けてみること”で、焙煎のバッチごとに繰り返して行うようにしました。上位3位が同じ豆ということからもわかるように、本当に豆のポテンシャルが素晴らしく高かったので生産者さんの努力の賜物だと思います。
◆澤野井さんからのメッセージ
2020年にエチオピアで初開催されたCOEで1位、翌2021年も25位と、2年連続で入賞しているエチオピア最高峰の生産者さんのコーヒーです。
焙煎については、尊敬している大先輩のロースターでaoma coffeeの青野さんの言葉をお借りすると「豆を整える」、つまり豆の個性を活かしながら他の要素を整えてバランスを取ることを意識しました。
ポテンシャルがある豆なので僕なりにその言葉を解釈し、このコーヒーが持つポテンシャルを壊さないようにするとともに、自分が思うネガティブが極力出ないよう、そしてほんの少しだけ酸が抑えられるように努めました。エチオピア最高峰の個性がそのまま出ているコーヒーです。ぜひ皆さんにも楽しんで頂けると幸いです。
ABOUT US COFFEEはコーヒーの多様性を認めるコーヒーショップです。いろいろな生産地のさまざまなプロセス、幅広い焙煎度合のコーヒーを今後も提案し続けられるよう努めますので、今回のコーヒーはもちろん、ぜひ他のコーヒーも飲んでいただけたら嬉しいです。
そしてここにランクインされたお店も含め、他のコーヒーショップでもぜひ! 開業当初、僕はコーヒー業界での下積み歴もツテもほとんどなかったので「自分の力で何とか道を切り開いてやる!」と思っていました。しかし、2年経ってやっと気付いたことがあります。
それは「ABOUT US COFFEEにコーヒーを求めてきてくれるお客様は、以前からコーヒーが好きだった方々。つまり自分より先にこの業界でコーヒーの良さを広めてくれていた方々がいたからこそ、ABOUT US COFFEEにもたどり着いてくれたということです。なので、僕は先人たちに敬意を払うとともに、これからコーヒーを志される方にもそう思ってもらえるお店にしなければ、と思っています。
日本はコーヒーに関しては消費国です。今回審査会で使用したニグセ・ゲメダさんのコーヒーはとても品質の良い状態で消費国である日本に入ってきました。しかし、日頃ロースターをしていて感じるのは、もちろん品質の良い生豆を仕入れられることが多いのですが、一方で、仕入れの段階で頑張って目付けをしても、生産国から消費国にくる過程で少し品質が落ちてしまうものがあることも中にはあるということ、そして、継続して扱っている農家さんの豆がその年の気候の影響で前年ほどの品質にならないこともあるはずです。
そんな中で、みなさんの周りのロースターやコーヒーショップは、仕入れた豆と向き合い、その豆が最大限美味しくなるように日々試行錯誤を繰り返して、美味しいコーヒーを届けてくれています。なので、どんなコーヒーに出会っても、そこには想いが込められているということを感じながら“多様性という名の寛容な心”をもって楽しんで欲しいと思います。
と、今回はこのような取材の機会をいただいたので自分なりに感じていることを伝えさせていただきましたが、結局は美味しいコーヒーに出会ってもらいたいだけなので、一言にしたらABOUT US COFFEEのテーマの一つであるこの言葉に尽きます。
「Wish your happiness bloom, with a cup of bliss……」
そして私たちのコーヒーがあなたのコーヒーエクスペリエンスの物差しを1mmでも広げられることを願っています。
【1位】ABOUT US COFFEE
エチオピア/ニグセ・ゲメダ・ムデ農園/ナチュラル
購入する >>
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