2024年11月2日(土)〜3日(日)、コーヒーフェスティバル「COFFEE COLLECTION」が東京・KANDA SQUAREにて開催されます。この記事では、出店店舗を決める審査会「COFFEE COLLECTION DISCOVER」のInnovation部門を取材。同部門の1位、2位と10位以内で印象的だったコーヒーについての評価、そしてどのような点を重視して審査を行ったのかを、ジャッジをつとめた鈴木 樹 さん (珈空暈)、畠山大輝 さん (Bespoke Coffee Roasters)、小野 光 さん (Brewman Tokyo)にお聞きしました。また、カナダから参加したBoris Lee さん (Hatch Coffee)にはメールでインタビューを行いました。

※お知らせ※  今年はエントリー開始時に応募が集中し、システムエラーが発生したため、定員数に達したあとすぐに応募フォームをクローズすることができませんでした。そのため今年はエントリーされた32名全員を受付としました。ジャッジは32名カップすべてを審査しています。

 

◆Innovation 部門 TOP10

 

―カッピング審査、お疲れ様でした。得点を集計しましてトップ10がでました。1位はDays Coffee Roasterです! まずはこちらのコーヒーについての感想を聞かせてください。

小野さん:みかんのような柑橘を思わせるフレーバーやスイートネス、カップのバランスの良さに惹かれた一杯でした。

樹さん:まずアロマが素晴らしくてスイカや桃、オレンジブロッサム、それからフローラルでフルーティーなフレーバーがありコンプレックスでした。温かい時から冷めた時まで一貫した甘さがあり、いきいきとした感じが印象的です。液体が完全に冷めた後は少しドライさ(舌が乾いていくような感覚)が気になりましたが、ユニークなコーヒーでした。


畠山さん:酸のライブリーさ(いきいきとした感じ)と甘さが際立っていて、すごくバランスが良かったです。僕はこのコーヒーの酸味、甘味、バランスに高得点を付けました。この種の豆の難しいところでもあるのですが、少しだけ焦げ由来のスモーキーなフレーバーとラフな印象がありました。COFFEE COLLECTIONの時にドリップで入れたコーヒーを飲むのがとても楽しみです。

Borisさん:非常にエレガントで、精製方法と品種の特徴がしっかりとでているコーヒーでした。そしてフレーバーがとても明瞭でした。

 

―では次に2位のAALIYA COFFEE ROASTERSのコーヒーの感想をお願いします。

小野さん:温かいときはプラムのように熟したストーンフルーツ、洋酒のようなアルコール感があり、アロマがユニークなカップでした。冷めると飲み辛さを少し感じました。


樹さん:パイナップルのような鮮やかなアロマとジューシーな風味があり、液体が温かい時から冷めるまで一貫した印象。発酵由来のパワフルな風味と、コーヒーのもつエレガントな味わいのバランスが心地よいコーヒーでした。

畠山さん: 発酵由来の強いフレーバーで酸の強度も高く、一口目からびっくりしました!この種の豆は飲みにくいコーヒーになりがちですが、焦げの印象が少なく、甘さのサポートがあり、ギリギリのところでバランスがとれていました。「焦げやすそうで難しい豆なのにすごいな」と率直に思いました。

一方で、冷めてくると甘さが少し感じにくくなり、ややシャープになったり、質感も冷めるにつれてややラフさを感じました。これが抽出でどのように変わるのか、こちらもCOFFEE COLLECTIONでブリューしたものを飲むのが楽しみです。

Borisさん: とても強い甘さがあり、長い余韻とベリーやバラの強い香りを感じました。驚きとともにとても印象に残るコーヒーでした。

 

―では次に、1位2位以外のトップ10に入った中で、好きだったコーヒーをそれぞれあげていただけますか。

樹さん:私はエントリーナンバー「10」のFREAK COFFEE ROASTERSです。スミレのような印象があって、とってもフローラル。フレーバーの強度が心地よくて、甘い余韻が一貫して持続していました。

畠山さん:僕は「22」のX coffee GINZAです。焙煎による美味しさを感じて甘さと酸味のバランスがよかったですので点数は高いです。フレーバーはプラム、梅に近いプラムのような感じがありました。アフターテストは少しぼんやりした印象に変わったので点数が少し下がりましたがそれ以外はすごくよかったです。


小野さん:僕は「25」のGLITCH COFFEE & ROASTERSに1番高い点数をつけました。みかんのような感じ、そしてブライトなアシディティもあり、少しメロー(まろやか)で、とにかくとても飲みやすかった。 酸と甘さのバランスが良かったです。

Borisさん:私は「12」のONIYANMA COFFEEが気に入りました。このコーヒーは他のロースターが焙煎したものも飲んだことがあるのですが、他店のいくつかは味が強すぎる印象でした。しかしこのコーヒーはとてもエレガントに仕上がっていました。

 

―ありがとうございました。それではここからInnovation部門の審査を終えて、全体的な感想をお聞きします。いかがでしたか?

小野さん:今回はじめて参加しましたがカップはどれもレベルが高く、甲乙つけ難かったです。1つのフルーツを明確に感じられるカップもあれば、アロマティック(芳醇な香りがする)なコーヒーも多く、おもしろかったです。


樹さん:Innovation部門にふさわしい多様性を感じました。 個性豊かなキャラクターのコーヒーがたくさんあってとてもワクワクしました。小野さんも言っていたように、アロマティックなコーヒーがすごく多かったですね。1つのフレーバーがしっかりと強くて支配的なものもあれば、フレーバーのコンビネーションがおもしろいなというものもあったり。似たような味や香りのプロファイルだったとしても、焙煎のアプローチによってまた全然違う表情も感じられて、すごく楽しいセッションでした。

畠山さん:フレーバーが強烈なものもあれば、穏やかに仕上げてきているなと感じるものもあり、焙煎人の生豆のチョイスや意図を感じられるカップが多かったです。

それからInnovation部門という一つのカテゴリとは言えど、“特殊なフルーツなどを使って作られているタイプのもの”と、“発酵をうまく取り入れて作られているタイプのもの”、それぞれのテイストやフレーバーの違いが感じられて、それもすごく良かったです。

Borisさん:ほとんどのコーヒーが高品質で、フレーバーの強さもあったので、審査は容易ではありませんでした。近年、革新的な精製方法は進化がめざましいです。多くの生産者が独自の味の追求し、安定してコーヒーを生産するための十分な経験値を積んできていると思いますので、これからこのカテゴリのコーヒーはさらに広がっていくと考えています。

 

―Innovation部門の豆を審査するにあたり、ジャッジのみなさんはどのような点を重視して審査していたのでしょうか。

小野さん:僕は「甘さ」と「酸」のバランス、そして「冷めてバランスが取れているか」という3つがポイントでした。具体的に言うと、甘さのサポートがしっかりあって、酸が明瞭であること、そして冷めてからの印象を重視しました。

畠山さん:フレーバーはみなさん強度があるものや特徴的なものが多かったのと、おそらく「同じ原材料だろうな」というのもあって、そこでの点数の差はつきにくかったです。

僕にとって得点の差が出たのは「スイートネス」、「アシディティ」、「マウスフィール」、「アフターテイスト」です。やはり焦げ感が出ていたり、 質感が荒れてしまっているものは点数が低くなります。「スイートネス」と「アシディティ」は焙煎によって変わるものなので、そのあたりを着目して点数をつけました。


樹さん:お二方と共通するんですが、フレーバーの部分で点数の差はつきにくくて、良いものは良いとつけました。どちらかというと、この審査会はカッピングで評価しているので、「アフターテイスト」、「マウスフィール」、「アシディティ」で差を感じました。

というのも、この3つの項目があたたかい時は良くても、冷めてきたときにダウングレード(評価が下がる)してしまうものが多くあったんですね。たとえば「スイートネス」でいうと、私は香りに引っ張られがちなところもあるのですが、温かい時は香りが強いので甘い香りを感じて「いいな」と思っても、冷めてきた時にそれがぐっと落ちてしまったものが多くありました。一方で、良いコーヒーは一貫してこの3つの項目が「常に心地よい」そして「わぁ」と心を動かす驚きがありました。

 

―最後に、Innovation部門でのカッピングを終えての感想をお願いします。

樹さん:今回TOP10に残ったのはコロンビアとブラジルのみですよね。今後、オリジン的な多様性も出てきたら、もっとおもしろくなるのかなと思いました。

畠山さん:そうですね。それから「産地の環境的に難しい豆の品質をプロセシング(精製方法)によって引き上げた豆」と、「もともと豊かな環境で丁寧に育てられてそれにプロセシングを用いてさらに良く上げた豆」など、豆とプロセシングの掛け合わせパターンも多様化していきそうですよね。

樹さん:はい。この数年、気候変動によって昔飲んだようなハッとするコーヒーはどんどん減ってきているように感じているんですね。とくにWashedは。なので、Innovation部門のコーヒーのように、人がサポートすることで美味しくなるというのはすごく素敵なストーリーだと思います。そして今後に期待しています。

小野さん:僕は昔、エチオピアのWashedやNaturalを飲んで「コーヒーっぽくない」と思ったことがこの業界に 入った“きっかけ”なんですが、おそらく今の子たちにとってはそれがInnovation部門のコーヒーなのかなと思うんです。「普段飲んでいるコーヒーと違うぞ」っていう感じ。

そういうコーヒーに触れる機会が新たなコーヒーラバーを生み出したり、また新しいコーヒー文化を作り出すのかなと思います。なので、“コーヒーに興味をもつきっかけになる素材”という意味でもすごく可能性を感じています。

それから今、生産国の方や農園主の方たちは複雑でおもしろいプロセスに挑戦していて、今後はさらに切磋琢磨していくと思うんです。長くコーヒーに携わってきた人の中には、この種のコーヒーに共感しない人がいることも事実ですが「これがよかったのかどうか」は、何年か経った後にわかることだと思います。だから、僕自身は「新しい可能性は受け入れていきたい」と考えています。


樹さん:それから今日の審査はカッピングでしたが、このコーヒーをドリップで飲みたいなと思いましたね。Innovation 部門に属するコーヒーはお店でどのように抽出しているのか、すごく気になります。

畠山さんと小野さん、おふたりはちょうど日本一のブリュワーズチャンピオンですよね(ふふふ)。こういった豆を見ると「この器具を使おう」みたいな閃きがあったりするんですか?

畠山さん:いやー、この種のコーヒーの抽出は難易度がすごく高いですよね……。アロマが強いコーヒーはギャップを感じることが多くあるんです。というのもアロマが良いと、それだけで味わいに対する期待値が高くなりがちですが、飲んでみると意外と「甘さが足りないな」とか「質感が思っていたものと違うな」ということが多いので、“うまく淹れる”のは簡単なことではないんです。

小野さん:このカテゴリのコーヒーの抽出は難しいですよね。僕はけっこう、淹れるのが苦手です……(笑)。


畠山さん:ちなみにカッピングとドリップでは収率が全く異なりますし、後半の抽出力でいうとカッピングはなだらかになりますが、ブリューでは調整できる分、そこでネガティブな要素が強くでてしまうこともあります。だから、うまく抽出する必要があるんですよね。

樹さん:さっと落とす感じですか。

畠山さん:さっと落とすか、ちょっと浸漬気味に落としていくかですね。

畠山さん:この競技会ではカッピングで審査するのでそれ用に焙煎してきていると思いますが、お店で提供するときやCOFFEE COLLECTIONの当日はブリューで提供するので、おそらく焙煎も調整してこられるんじゃないかなと想像します。ブリューでどうなるのか、会場で飲むのが楽しみです。

―Innovation部門のジャッジのみなさん、ありがとうございました!

 

審査会を勝ち抜いたコーヒー店とジャッジの店が集結する
「COFFEE COLLECTION 2024」開催!

2024年11月2日(土)〜3日(日)、「COFFEE COLLECTION 2024」が開催されます。このコーヒーフェスティバルの最大の特徴は、総エントリー数104のロースターから、厳正なる審査を経て選ばれた店舗6店と、ジャッジをつとめた店舗が集結すること。

高品質な豆の選定、焙煎、抽出など、カップ一杯のコーヒーになるまでのすべて工程において、“こだわりと情熱”をもって作られた世界トップクラスの“シングルオリジンコーヒー”を味わうことができます。
また豪華登壇者を招いたコーヒーの知識を深めるセミナーも開催予定。ぜひ世界最先端のコーヒー体験をお楽しみください。

◆日時
2024年11月2日(土)11:00〜18:00、3日(日) 11:00〜17:00

◆会場
第一会場:KANDA SQUARE(東京都千代田区神田錦町2丁目2−1)
第二会場:ONCA COFFEE 神田店(東京都千代田区神田錦町3-1 安田シーケンスタワー JINS東京本社1階、2階)

◆HP
http://coffeecollection.tokyo
※今年のサイトは10月更新予定

◆Instagram
https://www.instagram.com/coffeecollectionofficial

◆X
https://x.com/COFFEECLC

会場協力:COUZOU
Photo: Shintaro Yoshimatsu
Interview & Writing : Ayako Oi

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COFFEE COLLECTION DISCOVER 2024 「Washed部門」 審査会後・インタビュー

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