2024年11月2日(土)〜3日(日)、コーヒーフェスティバル「COFFEE COLLECTION」が東京・KANDA SQUAREにて開催されます。この記事では、出店店舗を決める審査会「COFFEE COLLECTION DISCOVER」のWashed部門を取材。同部門の1位、2位と10位以内で印象的だったコーヒーについての評価、そして各ジャッジがどのような点を重視して審査を行ったのかを、Washed部門を担当した三神 亮さん(Roast Design Coffee)、鈴木 清和さん(GLITCH COFFEE & ROASTERS)、園田 道徳さん(IMOM COFFEE ROASTERS)にお聞きしました。また、スイスから参加した深堀 絵美さん(MAME)にはメールでインタビューを行いました。
※お知らせ※ 今年はエントリー開始時に応募が集中し、システムエラーが発生したため、定員数に達したあとすぐに応募フォームをクローズすることができませんでした。そのため今年はエントリーされた43名全員を受付としました。ジャッジは43カップすべてを審査しています。
◆Washed 部門 TOP10
―カッピング審査、お疲れ様でした。得点を集計しましてトップ10がでました。1位はToy&Co-です! まずはこちらのコーヒーについての感想を聞かせてください。
三神さん:フローラルでフルーティな、甘さのあるカップでした。アメリカにあるJell-Oのオレンジゼリーのようでしたね。
園田さん:ゲイシャのフローラルさがあり、アップルの爽やかさも印象的でした。綺麗で複雑な酸があり、とても美味しかったです。アフターテイストの長さは焙煎技術によるものかなと感じました。
鈴木さん:クリーンカップで綺麗でしたね。フローラルでマンダリンオレンジのよう。飲みやすかったです。
深堀さん:Washedのコーヒーでありながら、クリアでわかりやすいフレーバーでした。 全体的に味が大きかった印象です。
―では次に2位のLUCENT COFFEEのコーヒーの感想をお願いします。
三神さん:僕はこのコーヒーが1番好きでした。典型的なゲイシャのフローラルさが出ていて、シンプル、レモン的な感じ。レモンパイ、ジャスミンとも書きました。そしてクリーンカップでした。
ペルーのゲイシャは、よく青臭くなったり、ナッツっぽくなったりするパターンもあるんですが、そういうのはあんまり感じられなかったですね。
鈴木さん:ゲイシャらしい味わいがして、甘みもありましたね。アフターテイストが少しショートフィニッシュなのは、ちょっと気になりました。
園田さん:フローラルで、シトリックな酸、アップルのような風味もありました。ゲイシャらしくてよかったと思います。
深堀さん:フローラルな印象、そしてヨーグルトのようなフレーバーと質感でした。わたあめのような甘さもありました。
―では次に、1位2位以外のトップ10に入った中で、好きだったコーヒーをそれぞれあげていただけますか。
園田さん:僕はエントリーナンバー「18」のMANLY COFFEEですね。洋梨のような上品な甘さやアップルのフレーバーが綺麗に出ていてほっとする味わい。Washedの良さを感じる美味しいコーヒーでした。
三神さん:「39」のSHIKISHIMA COFFEEです。オレンジやライムといった柑橘系の印象があり、バランスがよく、フローラルで安心できる感じでした。柑橘系が優位になりすぎると逆にゲイシャ感が弱まったりする場合もあるのですが、このコーヒーは典型的なゲイシャの特徴がよく表れているコーヒーでした。
鈴木さん:僕は「19」のタカムラコーヒーロースターズですね。クリーンカップで、冷めてきてからジャスミンのような芳醇なゲイシャの味わいが広がり、個人的には一番好きでした。
深堀さん:「3」のFILTER SUPPLYはジューシーな口当たりで、ざくろやレモングラスのフレーバーを醸し出していて好印象でした。
―ありがとうございました。それではここからWashed部門の審査を終えて、全体的な感想をお聞きします。いかがでしたか?
三神さん:ゲイシャ多めでしたね。
鈴木さん:そうですね。深煎りはあまりなかった印象です。ただ、豆がちょっと良くないものはありましたね。
園田さん: 僕は今回、初めて審査会に参加させてもらいましたが、驚きのあるコーヒーがいくつかありました。ゲイシャ以外でもキラキラ輝いている、テロワールや品種由来のWashedらしさを感じるカップもあって、それには高得点をつけました。
鈴木さん:それからトップ10でいうとペルーが多かったですね。ペルーがこんなに出てくるとは思わなかったです。
三神さん:ペルーは伝統的な精製方法が主流なので、Washedらしいコーヒーという意味では安心感がありますね。それがコロンビアなどの国だと、なにかしらの精製処理が行われていることが多いです。
ペルーのWashedはハーバルになりがちですが、今回ここに出てきたものはよかった。いい意味で期待を裏切ってくれました。あとは、エチオピアやホンジュラスが少ないのも意外でした。
深堀さん:口当たりは重いけれど綺麗な印象の豆が多かったです。その分、欠点豆やパストクロップ(前年に収穫されたコーヒーの生豆)は目立ちました。また軟水を使用してカッピングを行ったので、焙煎の欠点が目立っていた豆もありました。
―Washedの豆を審査するにあたり、ジャッジのみなさんはどのような点を重視して審査していたのでしょうか。
深堀さん:私が“Washedのコーヒー”と聞いて楽しみなのは 「綺麗」で「奥ゆかしい酸」と、「綺麗な甘さ」のバランス。そして長い「アフターテイスト」。そして フレーバーに角がなく、「ラウンド」であることです。
鈴木さん:僕は「クリーンカップ」です。あとは冷めた時にフレーバーがどう変わるか。例えば、レモンからオレンジ、のように良い方向に変わっていくもののように、「アフターテイスト」が冷めてもよいものはいいですね。
三神さん:まずは「クリーンカップ」。やっぱりベースのコーヒーがクリーンだとフレーバーなど全ての要素が明確になってきます。いいコーヒーでも、クリーンカップでないと、全体の印象が下がってしまいます。
それからやはりWashedは“安心できる味”がいいなと思うんです。“安心できる味”というのは、ゲイシャだったらゲイシャの味、ケニアならケニアらしい味を出せているということ。今回のカップの中には、なぜかライム果汁やパッションフルーツ系の味がするコーヒーや、インフューズド系のコーヒーもありましたが、審査の際にそれらの点数は低くつけました。Washedは「伝統的に美味しいものが1番よいのかな」と考えています。
園田さん:僕が去年、Washed部門に参加したときには、「ゲイシャ以外でチャレンジしたい」という気持ちがありました。 今回の参加者にもそういう方がいたのかなと思います。やはりオリジン(生産地)を感じるもの、品種らしさが出ているものの中で、焙煎がうまくいっているものを評価しました。
―最後に、今回のCOFFFE COLLECTION DISCOVER 2024では、エントリーする方も、パブリックカッピングに参加される方も、Washedが一番多かったです。これは世の中的にWashedが人気なのか、COFFFE COLLECTION DISCOVERならではの特徴なのか……。どう思われますか?
鈴木さん:少し前はWashedだけしか扱わないお店もありましたけど、最近は変わってきているように思いますし、どうなのでしょうね……。
園田さん:僕は競技者側の目線もあるのでその立場で考えると、Innovation部門は高額なコーヒー、そしてインパクトのあるコーヒーじゃないと戦えないと思っていました。もし、COFFEE COLLECTIONのトップ10に食い込める可能性があるとするならばWashedかなと思って、昨年はWashedカテゴリに参加しました。
三神さん:たしかに、いますごく高額なコーヒーが流行っていますよね。でも、買い付けルートは限られていますし、一般的なお店ではなかなか扱えないです。その中でWashedはまだワンチャンあるのかなと思うし、 自分たちが「これがいいんじゃないか」と作り出したものが評価されやすい地合いがあるようにも感じもします。
深堀さん:日本を筆頭に、アジアのマーケットでは綺麗で、後味の余韻の長いWashedのコーヒーが好まれる傾向があるので私は驚きませんでした。Washed のコーヒーは、“スペシャルティコーヒーの第一定義”となる要素があると思います。 今回はそんな人気の部門に参加させていただき、本当に嬉しかったです。
―Washed部門のジャッジのみなさん、ありがとうございました!Innovation部門の審査会後インタビューもお楽しみに!
審査会を勝ち抜いたコーヒー店とジャッジの店が集結する
「COFFEE COLLECTION 2024」開催!
2024年11月2日(土)〜3日(日)、「COFFEE COLLECTION 2024」が開催されます。このコーヒーフェスティバルの最大の特徴は、総エントリー数104のロースターから、厳正なる審査を経て選ばれた店舗6店と、ジャッジをつとめた店舗が集結すること。
高品質な豆の選定、焙煎、抽出など、カップ一杯のコーヒーになるまでのすべて工程において、“こだわりと情熱”をもって作られた世界トップクラスの“シングルオリジンコーヒー”を味わうことができます。
また豪華登壇者を招いたコーヒーの知識を深めるセミナーも開催予定。ぜひ世界最先端のコーヒー体験をお楽しみください。
◆日時
2024年11月2日(土)11:00〜18:00、3日(日) 11:00〜17:00
◆会場
第一会場:KANDA SQUARE(東京都千代田区神田錦町2丁目2−1)
第二会場:ONCA COFFEE 神田店(東京都千代田区神田錦町3-1 安田シーケンスタワー JINS東京本社1階、2階)
◆HP
http://coffeecollection.tokyo
◆Instagram
https://www.instagram.com/coffeecollectionofficial
会場協力:COUZOU
Photo: Shintaro Yoshimatsu
Interview & Writing : Ayako Oi