2020年春に、約4年間過ごした蔵前から駒沢へ移転した「mano cafe」。これまで築いてきた“自分たちの持ち味”はそのままに、生活圏も沿線もまったく異なるエリアで再出発をしました。新天地でも「変わらない」と語る、mano cafeの街との向き合い方とは。

食事、デザート、器、家具。すべてに“つくり手”の存在が感じられる場所

2016年に東京・蔵前にオープンしたカフェと雑貨の店「mano cafe」。食事やデザート、器、家具など、人の手で丁寧につくられたものに囲まれた、心地よく過ごせる空間にしたいと「手」の意味を持つ「mano」と名付けました。

モダンなグレーのモルタルの壁に、白木やオレンジ色の灯りをうまく取り入れた温もりある店内。そこで楽しむ手づくりのごはんと心ときめくスイーツは、多くのカフェ好きたちの心をつかみ、ほどなくして蔵前エリアを代表する人気カフェに。

併設する雑貨スペースでも、実際にカフェで使っている食器、食品類をはじめ、つくり手の存在を感じる作品を販売。今ではリネンやアロマグッズなど、他店ではほとんど扱いがない小さな工房や作家を自分たちで探して声をかけ、作品を取り扱っています。

そんなmano cafeが建物の老朽化に伴い蔵前での営業を終え、駒沢に移転オープンしたのは2020年3月6日のことです。

 

新たな地でのスタートに「不安はなかった」。4年間の経験を糧に

カフェを営む人はよく「物件は縁」だと口にします。mano cafeもまさにそんな縁に引き寄せられたのでしょう。新たな拠点に選んだのは、蔵前とは同じ沿線上でも隣接するエリアでもない、まったく新しい街でした。

「不思議と、不安や特別な心境の変化はなかったんですよね」。そう話してくれたのは、店長の桑原由紀(くわはら ゆき)さん。「立ち退きが決まったとき、『移転先が近くだと嬉しいな』といってくださった蔵前のお客様と離れるのはとても寂しかったけれど、そんなお客様が支えてくださった蔵前での4年間のおかげで、自分たちのカフェのスタイルを築くことができていました。“駒沢だから”と特別なことを始めるのではなく、内装のイメージや家具、メニューも変えずに持ってきて、駒沢の街の方々に『はじめまして、mano cafeです。よろしくお願いします』という気持ちでしたね」。

再スタートに向けて工事や準備を進めていた2月下旬といえばちょうど、新型コロナウイルス感染症への警戒が高まり始めていたころ。店先を通りかかった街の人が「こんなときに大変ね」「楽しみにしているから頑張ってね」と、声をかけてくれたといいます。

「皆さんの言葉にどれほど救われたか。とても嬉しかったですよ。まだお店に来たこともない方ばかりなのに、たくさん声をかけてくださって。ステキな街に来られたなと思いました」。

 

子供からお年寄りまで、親しみを持ってもらえる味わいを大切に

「ひき肉のカレー 季節の野菜添え」950円(税込)。毎日飽きずに食べられる美味しさを目指した自慢のメニュー。ボリュームもしっかり。

その後1ヶ月で緊急事態宣言が発令されてしまったため、しばらくはテイクアウトメインでの営業。それでもそんな街の声をエネルギーに変え、休むことなく営業を続けてきました。

メニューは定番の「ひき肉のカレー」や「本日のパンランチ」などからスタート。さらに、蔵前のmano cafeを一躍人気カフェにした看板メニューの「季節のパフェ」が自宅で楽しめるようになれば、駒沢の街の人にももっと喜んでもらえるのではと、なんとかテイクアウト仕様に整えて販売をはじめました。

フードを担当する山口実苗(やまぐち みなえ)さんは、「近隣にお住まいのファミリーのお客さまにとても喜んでいただきました」と、嬉しそうに話します。「蔵前にお店があったころからmano cafeには、お子さまやお年寄りまで街で暮らす幅広い方が来てくださいます。お酒をきかせたスイーツやスパイスをたっぷり使った個性的な料理よりも、どんな人にも素直に『美味しい』と親しんでもらえる味を大事にしています」。

「昨日もmano cafeだったけど、今日も食べたいな」「何度食べても、mano cafeのカレーは美味しいよね」。そんなふうに飽きずに食べたくなる手づくりのあたたかさと、満足感のあるボリューム。でも家庭では味わえない、華やかな見た目や手間暇かけてつくられた丁寧な美味しさが、mano cafeが描くカフェの要素のひとつ。

「季節のパフェ」750円(税込)。この日は自家製プリンで作る「メロンとプリンのパフェ」。

 

街の声や反応を丁寧に集めて、メニューを改良

桑原さんと山口さんは口を揃えていいます。「蔵前も駒沢も、わたしたちは街の人の嗜好や生活スタイルを熟知しているわけではありません。なので、気張ってそれに合わせるというより、自分たちがいいなと思うことをまずはいろいろやってみて、お客様の声やキッチンに戻ってきた器から反応を見て、メニューをアレンジしたり量を調整したりしてきました」。

看板メニューのパフェも、当初はたくさん出していたスイーツの1種にすぎなかったそう。「皆さんが気に入って広めてくださったので、じゃあ力をいれてやってみよう! と」。オープンキッチンから見えるお客様の喜ぶ顔を楽しみに、今では月替りで年に12種類のパフェを提供。相乗効果のようにパフェを求める声は高まり、季節ごとに訪れるお客様も少なくありません。

エディブルフラワーを氷に忍ばせてつくる「お花のソーダ」600円(税込)は暑い季節のイチオシ! ぜひカレーやパフェと一緒に。

それでも、単に要望を丸呑みするだけでは自分たちの目指すカフェの姿がブレてしまうから、あくまで“プラスアルファ”で参考にしていると山口さん。

「駒沢に来てみて、スイーツよりもお食事を楽しみに来られる方が多かったり、お米よりもパンが人気だったり、この街の声が少しずつ届きはじめています。毎日発見がいっぱい! そんなこの街ならではの声も取り入れながら、また新しいものにチャレンジしたいですね」。

この数ヶ月、普段何気なく接している人や過ごしている時間がどんなに大切かを強く感じた方も多かったことでしょう。取材に訪れた6月末の夕方、店内には多くのお客様が。mano cafeが街の声に助けられたのと同じように、誰かが手間暇をかけてつくってくれる美味しいごはんやパフェは、街の人の大きな力になったに違いありません。だから今こうして、駒沢の街に受け入れられ始めているのではないでしょうか。mano cafeが、街の声を受けどんなふうに駒沢に馴染んでいくのか、とても楽しみです。

◆mano cafe(マノカフェ)
住所:東京都世田谷区深沢4-35-5
TEL:03-6658-5863
営業時間:11:00〜18:00 (L.O.17:00)
定休日:水曜
HP:http://manocafe-yore.com/
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