焙煎日本一を競う、ジャパン ロースティング チャンピオンシップ2018で優勝した井田浩司さんが率いるROKUMEI COFFEE。奈良という立地上、様々な世代、そして国内外からのお客様が訪れるなかで、“親しみと尖り”を持って、自分たちが美味しいと思うコーヒーを追求・提供している。Vol.1では井田さんに1974年から続く店の歴史と、2019年に大きくリニューアルした本店についてCafeSnapの大井が伺いました。

◆お話を伺ったのは……
井田 浩司さん
ROKUMEI COFFEE オーナー・焙煎士。1974年から続く家業の喫茶店を大学生の頃から手伝い、のちに自家焙煎コーヒーを始めたことで焙煎士としてのキャリアをスタート。焙煎技術の日本一を決めるジャパン ロースティング チャンピオンシップ2018優勝。2019年11月に開催される世界大会への出場が決まっている。

親しみやすさを大切にしながら、こだわりのコーヒーを提案

大井:今日はよろしくお願いします。まず、ROKUMEI COFFFEについて伺います。井田さんにとってROKUMEI COFFFEを一言で表すとどんなお店だと思いますか?

井田さん:理想も含まれますが、“親しみやすく、尖っている店”ですね。自分たちはスペシャルティコーヒーが好きで品質などにこだわっていますが、それだけではとっつきにくいお客様もいるかもしれません。なので、接客やお店の雰囲気、パッケージなどでの親しみやすさを大事にしています。

大井:尖っている、というのはコーヒーについてですね。

井田さん:うちでは一般的なコーヒーよりも、浅煎りでフルーティなコーヒーを得意としています。お客様が求めているコーヒーは色々あると思いますが、それに応えつつも、お客様に合わせすぎないように。コーヒーの品質については特に、自分たちが良いと思うものを、良いと気づいてもらえるように自信を持って提案していきたいと思っています。

不景気と競合店の増加で考えた、自分たちにしかできないこと

大井:ROKUMEI COFFFEは喫茶からスタートされたと聞きました。どのような歴史がありますか?

井田さん:1974年に父が純喫茶「ROCOCO」を開業し、サイフォンでコーヒーを提供していました。自家焙煎を始めたのは2010年で、それまでの約35年間に4回ぐらい業態を変更しています。一時期はイタリアンバールのような時もあったんですよ。

 

大井:2010年に自家焙煎を始めたのはなぜですか?

井田さん:僕は大学時代から店を手伝っていて、その頃ちょうど、コンビニコーヒーやファストフードがプレミアムコーヒーを出し始めたんです。当時は世の中的に景気が悪いうえに競合が増え、店の売り上げも厳しい時期でした。

長く続けてきた家業をこの先、どうやったら続けていけるのか……。当時の店は他店と差別化ができなかったので、“自分たちじゃないとできないこと”をしなくてはと思ったんです。

大井:具体的にはどのように店を変えたのですか?

井田さん:まず、自家焙煎コーヒーをメインにして、店はセルフサービスからフルサービスに変更。フードはできるだけ自分たちで手作りし、ケーキも自家製にしました。それから、店を全面禁煙にしました。そしたら、お客さんがめちゃめちゃ減っちゃって……(笑)! 2010年頃はまだ喫茶店で喫煙できることが普通でしたからね。

 

大井:そこからすぐに状況は好転していったのでしょうか?

井田さん:いきなり変わった、という感じはなかったです。だらか、その時は「いまの自分たちにできることをきっちりやろう」と思っていました。例えば、お店を清潔に保つ、接客を丁寧にする、それだけは続けていました。うちは年配の方を含めて、色々な世代の方がいらっしゃいます。常連さんが来ると「あの人には○○新聞」と、昔の喫茶店のように新聞を持って行ったりもしていました。それから、コーヒーは美味しいものを出す、そして値段は下げない、ということをブラさないようにしていました。

大井:2015年に新ブランドのROKUMEI COFFEE CO.を立ち上げて、2017年にTOMIO ROASTERYをオープン。そして、本店のROCOCO を2019年3月にROKUMEI COFFEE CO.へリニューアルされていますね。

井田さん:2015年にROKUEMI COFFEE CO.のブランドを立ち上げて以降、コーヒーを販売する時や祭事ではROKUMEI COFFEEとして出店していましたが、実店舗はROCOCOのまま運営していたので、ブランドを統一したかったんです。

それから一時期、スタッフの退職が続き、店をこれからどう運営しようか考えるタイミングがやってきました。当時残ってくれたスタッフと、もう一度何をすべきか、お店やメニューを1から考え直してみると、自分たちの強みは、やはりコーヒー。働くスタッフのモチベーションもコーヒーにあったので、手の込んだサンドイッチやケーキなどのフードをやめて、リニューアル後は、クロワッサンひとつに絞り、やるべき事や伝えたい事に集中するようにしました。

 

大井:いまお店ではどんなコーヒーを提供されていますか?

井田さん:コーヒーは全部で 8〜10種類。ブレンドは3種で、浅めと深め、季節のブレンドなどを用意しています。またシングルオリジンは常時5種類ほどを扱っています。

大井:井田さんが作るコーヒーにおいて、大事にしていることはなんですか?

井田さん:甘さとクリーンさですね。自分では意識していなかったのですが、特徴がわかりやすいコーヒーと言ってもらえることが多いです。スペシャルティコーヒーを評価する時も、甘さや酸味などの評価項目や個性を捉えるために、コーヒーのクリーンさは重要視しています。

 

大井:京都でいうと深煎りでスモーキーのように“ご当地の味”がありますが、奈良ならではのコーヒーの特徴というのはありますか?

井田さん:実は、奈良にはそれがなかったんです。というのも、奈良には同時期に創業したフジエダ珈琲さんが卸をされていたぐらいで、他に自家焙煎の老舗がほとんどないんです。よい意味で、古い文化がない分、新しいものを提案しやすかったというのはあります。

 

コーヒーとクロワッサンを看板メニューにリニューアル

大井:井田さんは、焙煎の日本一を決める大会“ジャパン コーヒー ロースティング チャンピオンシップ2018”で優勝されていますよね。ロースティングチャンピオンの店と聞くと、コーヒー専門店をイメージしますが、2019年にリニューアルした店では、クロワッサンも看板メニューのひとつです。コーヒーだけにしなかったのはなぜですか?

井田さん:もちろん、コーヒーだけでできたら良いのかもしれないですけど、自分自身もコーヒーを飲む時に「何か食べたいな」と思うタイプです。それから、奈良駅前の立地もありますね。人通りが多く、広い店内ですから“コーヒーだけの店”のニーズはないと思っています。お客様がカフェに求めているのは美味しいコーヒーと美味しいペーストリー。それがあれば、より親しみやすさを持ってもらえると思いました。

大井:様々なフードの選択肢がある中で、クロワッサンを選んだのはなぜですか?

井田さん:「クロワッサンが好き」というのと(笑)、海外のカフェ、とくにサンフランシスコではよくお店でクロワッサンを見かけました。食べやすくて、シンプルなのでどのコーヒーに合って、さらにフレンチトーストのクロワッサンのようにアレンジできるのも魅力です。

店としては、ひとつのことに特化することで、クオリティを上げる事ができること、そして手間をかけすぎずに美味しいものを作りたいと思ってたんですが……、やってみたら、クロワッサンは結構、手間がかかるんですよね(笑)。いまはバリスタたちがクロワッサンの作り方も覚えてくれています。

大井:そんなクロワッサンのこだわりを教えてください。

井田さん:添加物を使わないこと。そして、奈良県産の小麦や地元の食材など、できるだけローカルのものを使うようにしています。うちではそれを“From seed to cup spirit”と呼んでいて、スペシャルティコーヒーの考え方を食にも当てはめています。作り手が見えること、継続して使えること、健康的で安心して食べてもらえること。コーヒーだけでなく、フードやコーヒーカップにおいても、ストーリーをお客様に伝えていきたいと思っています。

 

Vol.2では、井田さんがコーヒー焙煎を始めたきっかけや焙煎大会での苦労、そして日本一になるまでの道のりと未来の目標を伺います。「焙煎日本一への道のりと、スペシャルティコーヒーで作る“幸せの輪” (Vol.2)」は10月4日(金)更新予定。お楽しみに!

 

ROKUMEI COFFEE CO. NARA (ロクメイコーヒー ナラ)

住所:奈良県奈良市西御門町31
営業時間:9:00~18:00(LO/17:30)
定休日: 火曜
メニュー:バリスタのオススメドリップコーヒー 500円〜、シングルオリジンコーヒー 550円〜、カフェラテ 580円、クロワッサン 250円、フレンチクロワッサン 380円
HP: https://www.rococo-coffee.co.jp/

 

Photo:Yohei Kida

Total
105
Shares
Next

“トレンドからカルチャーへ” ブルーボトルコーヒーのアイデンティティが凝縮した 清澄白河フラッグシップカフェがオープン!

View Post