10代の頃、「大人になったら一緒に何かしょう」と約束した、夢を描くのが得意な姉と、しっかり者の妹。
大人になり別々の道を歩んでいた2人は、約束から10年以上の歳月を経て、2020年に生まれ育った場所でカフェを開きました。2人がお店を開くことにした理由や、お店に込められた想いについてお聞きしました。
下北沢で生まれ育った姉妹が営むカフェ
下北沢と三軒茶屋のちょうど真ん中あたりにあるカフェ「シモキタシマイ」。店名に“シマイ”とあるように、ここは姉の典(のり)さん、妹の真(まな)さん姉妹が手がけるお店です。
太陽光がたっぷり入る開放的な空間では、姉妹が作るこだわりのケーキや焼き菓子、お料理などを味わうことができます。
それぞれに好きな道を選択して生きていたら、すべてがここにつながった
「シモキタシマイ」の店舗があるのは、妹・真さんが暮らす一軒家の1階。この建物は元々、建築士だったお父さんが建てた、2人の実家でした。かつては料理研究家として活躍していた姉妹のお母さんも、ここで洋菓子店や、お料理・お菓子の教室を開いていたそう。そこを新たにリノベーションし、店舗を作りました。
姉妹は幼い頃から、お母さんが営む洋菓子店のお手伝いをしたり、一般の生徒に混じってレッスンを受けるなど、お菓子と料理にまつわる知識や技術を習得。
しかし社会人になってからは、姉・典さんはIT系企業での勤務を経て、政府開発援助の専門家としてカンボジアで生活、妹・真さんは人事関連の会社や広告会社に勤務。現在とはまったく別の道を歩んでいました。
それぞれに充実した日々を送るなか、ある時、お母さんに深刻な病気が発覚。このことが、二人の中に眠っていたお菓子への想いを呼び起こすきっかけに。妹・真さんは製菓学校に入り、お菓子作りを基礎から学び直しながら、お母さんの店の販売や製造にたずさわりました。
それから2年ほど経った頃、両親が相次いで他界。その頃をふりかえり、「母のことは少しずつ覚悟していましたが、父を失ったのは予期していなかったのでとてもショックでした」と妹の真さん。
深い悲しみにくれるなかで、2人の心に「人は永遠に生きることはできない。それなら後悔しない生き方をしよう」という気持ちが生まれたのだそう。かねてより行動の指針にしていた「迷ったら、“心踊る方”を選ぶ」という考えも、より確固たるものに。
それで2人は子供の頃に思い描いていた「大人になったら一緒に何かしょう」という夢を、とうとう叶えることにしたのです。
現在2人が手がける「シモキタシマイ」の店頭には、毎日、お母さんから受け継いだレシピをベースに作るケーキや焼き菓子がずらりと並んでいます。
また、スイーツを盛りつける食器類には典さんがかつて暮らしたカンボジアのものを使用したり、広告会社で働いていた真さんはSNSでお店の魅力を発信したり。
これまでまったく畑違いだと思っていた2人の知識や経験は、「シモキタシマイ」にとっては欠かせない“個性”となっています。
実家に帰ってきたような、居心地の良い場所
お店全体の内装は、白を基調とした空間に、ネオンサインや海外アーティストの作品を配し非日常感を演出。
下北沢を訪れる人の好みを意識し、ちょっぴりサブカル的要素を取り入れたそう。下北沢を熟知した2人だからこそ作ることができた空間です。
その一方で、イートインスペースは靴を脱いで入るスタイルを取り入れていて、まるで気心の知れた友達の家に招かれたような“つい長居したくなる居心地の良さ”も。
「建築士だった父が建ててくれた家の一部を見ていただけるのも、良い使い方だなと思って」と嬉しそうに話してくれたのは、姉・典さん。“かつて家族が愛した場所”から“みんなに楽しんでもらう場所へ”と、軽やかに変化させました。
母から受け継いだレシピに、姉妹らしいエッセンスを加えて
「シモキタシマイ」のお菓子のテーマは、“幅広い世代から愛される味”。お店を訪れるお客さんには地元の常連客も多いため、小さな子供から年齢を重ねた人まで、みんなに美味しいと思ってもらえるものを意識しています。
また手作りの温かみを感じてもらえるよう、あえて見た目や構成は精巧にしすぎず、日々の生活に溶け込むスイーツを目指しているそう。
そんな「シモキタシマイ」の看板メニューは、母から受け継いだレシピに姉妹が新しいエッセンスを加えた「アップルパイ」(660円)。
サクッと香ばしく焼かれた生地の中には、シナモンやナツメグのスパイスが効いたりんごのフィリングや、自家製ケーキクラムがたっぷりと入っています。りんごは季節によって品種を変えるというこだわりも。1カットが大きく、食べ応えも十分。
姉妹おすすめの食べ方は、なんとソーセージとの組み合わせ(+220円)なのだそう! しょっぱさと甘さが交互に楽しめ、繰り返し食べたくなる魅惑の味わいです。
ドリンクメニューの一番人気は、「自家製ほろ苦レモネード」(495円)。
グラスの中には細かく刻んだ、無農薬・ノーワックスのレモンがたっぷりと入っており、まろやかな酸味がスイーツと相性ぴったり。「リピートされる方が多い商品です」という話にも納得です。
「シモキタシマイ」の店頭には、毎日多くの種類の焼き菓子が並びます。「作るのは大変ですが、選ぶ楽しさを味わって頂きたいので、なるべくたくさんの種類を用意しています。週に1つは新しい商品を入れるようにしています」と、姉・典さん。
日持ちのする焼き菓子は、ついいろんな種類を買ってみたくなります。豊富な種類の中から好きなものが選べるのは、ここを訪れる多くの常連さん達からもきっと喜ばれているはず。
「やりたいことはまだまだあるので、ここを拠点に夢を叶えていきたい」と満面の笑みで話す、典さんと真さん。将来的にはこの場所で、カンボジアの雑貨や食材を販売したり、夜に楽しめるレストランやビストロを開きたいという夢もあるそうです。
この春は、心踊るおやつを求めて、下北沢に足を運んでみてはいかが。
◆シモキタシマイ
住所:東京都世田谷区代沢4-15-2
営業時間:10:00〜17:00
定休日:日、月曜
HP:https://linktr.ee/shimokitashimai
※公式LINEから予約可能
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