2021年、兵庫県伊丹市の静かな住宅街にオープンしたコーヒーショップ「SHIRNKEDO(シランケド)」。オーナーの住田さんは、会社員とカフェオーナーという二足のわらじで、ユニークなコーヒーショップを磨き続けています。手造りの心なごむ空間は、まるで気心知れた友人宅のよう。そんな「SHIRNKEDO」に込められた想いや創業ストーリーをお聞きしました。

 

好きなものを詰め込んだアイコニックなコーヒーショップ

古くから酒造りの町として栄えた兵庫県の伊丹市。駅前から石畳で舗装された通りの先にはミュージアムやコンサートホールなどが立ち、新旧のカルチャーが混在しています。

そんな街の中心部から少し北側にある閑静な住宅街に、鮮やかなファサードとキュートなキャラクターが目印のコーヒーショップ「SHIRANKEDO」があります。

「家に遊びに来た友人にコーヒーを淹れて、僕も一緒に座わりながら飲んでしゃべるようなお店にしたかったんです」。そう語るのは、オーナーの住田侑翼(すみだ ゆうすけ)さん。10席ある店内をのぞくと、木目のベンチ、ドット柄のチェアが置かれた空間が広がります。

ショップロゴに書かれているのは「coffee “n”conservation(コーヒーと会話)」。座面が低いローソファーと、その日のお店の雰囲気に合わせて選曲されたレコードがあるリビングのようなインテリアは、対話を大切にする住田さんの人柄があらわれています。

お店作りで真っ先に思い付いたのは「自分の好きなコーヒーを勉強したり、ラテアートを練習できる秘密基地」というコンセプト。

「10代の頃から車やメカいじりが好きだった」という住田さんが作り上げたDIYの空間には、アートブックや、SNSで一目惚れしたアーティストのポスター、オフロード用バイクのヘルメット、ビンテージのポラロイドカメラ、壁一面に並べたレコードがぎっしり。住田さんの少年のような心を表現した店内は、好きなものがランダムに、それでいて美しく詰め込まれていて、ワクワクと心が掻き立てられます。

「最初は、本当に何も置いてなかったんですよ。でも、お店を始めてみると、どんどんお客さんが来るようになって楽しくなって。お客さんがもってきたCDやレコードをかけるようになったらお客さんが80年代のレコードやCDを『これ上げるよ』と置いていくようになってモノが増えていきました」

レコードラックを眺めながら「その時間に合う音をかけるのが好きなんです」と住田さん。一つ一つの小物にある逸話を丁寧に語るその姿は、お店とお客さんへの愛着が滲み出ています。

 

スペシャルティコーヒーを出す、身近で親みのある店に

このお店を個性的でユニークにさせていることのひとつは「SHIRANKEDO(シランケド)」という屋号。関西の人には馴染みのある口ぐせで、冗談や親しみを込めるときや、照れ隠しのときなど、日常的に使われる言葉です。

店名の由来を住田さんは、「伊丹ですごく洗練された雰囲気のスペシャルティコーヒー店をやるのはちょっと違うかなと思ったんです。ここは住宅街で、日常の中にある場所。屋号を考えていた時期に、テレビで芸人さんが「しらんけど、しらんけど」ってたくさん言っていたのを聞いて、なんか良いなと思いました。『伊丹なので、これでいいんじゃないかな。まあ、しらんけど!』って(笑)」。

そして、もう一つ、お店について語るうえで外せないのがアイコン。店頭サインからオリジナルグッズまで、描かれたキュートなマスコットは、住田さんがオーストラリアで知り合ったイギリス人のアーティスト、ジェリーさんが描いたイラストです。

年に一度は来日するという日本通な友人に「可愛いやつを描いて」とだけ頼んで届いたのが、ポップな赤いリスのキャラクター。

たった一言のオーダーで「いい!」と思えるイラストが上がってくるのはお互いを理解し合っている証拠。SHIRANKEDOにある唯一無二の世界観は、住田さんの友人、お客様と作られているのです。

 

ダブルワークだからこそできた、シランケド

広島で学生時代を過ごした住田さんのバリスタの始まりは、東京のイタリアンバール。その後、大手コーヒーチェーンのバリスタなど関西でキャリアを積みながら、掛け持ちで仕事をして資金を貯めると語学留学のために海外へ。そのままアジアと中東の2カ国でコーヒービジネスに携わり、また日本へ戻ってきたという経歴の持ち主です。

「伊丹にゆかりは全くないんです。以前から勤めていた福祉の仕事をしながら、二足のわらじでやっていけるスタイルを考えていて、出会ったのがこの場所でした」

20代から海外で経験を積み、飲食店を掛け持ちして働くなど常にフル稼働のエネルギッシュな住田さん。なぜダブルワークというスタイルでカフェを始めたのでしょうか。

「最初は、ここで自分のやりたいことをやってみたい。シンプルに自分が作ったコーヒーを飲んで喜んでもらいたいというのはありましたけど、『これくらい稼がねば!』みたいなのはなくて、1日に8人くらいお客さんが来てくれたら維持できる、それくらいの目標が成立する場所で開業しました。別の仕事もしているからこそ、自分のやりたい事はこのお店で思いっきりできたんだと思います」。

夢を叶えるために現実的に考えたのがダブルワークというスタイル。「店では穏やかな気持ちでお客様に接する自分がいて、それは福祉の仕事でも活きていると感じています。もう一つの仕事があるから、カフェで好きにやれる。2つの仕事をやっていることが、いまの自分にとって、とても良いんです」。

一見、ハードに思えるこのスタイルですが、住田さんにとってダブルワークは自然なスタイルであり、ベストな方法だったのかもしれません。

 

バリスタが作ったコーヒーを渡す、“その瞬間の繋がり”が好き

若い頃に「やりたいことは全てやった」と、断言する住田さん。「本当は、お店を始める前に勤めた東京のお店で、コーヒーを仕事にするのは最後だと思っていました」と、意外な想いを持っていました。

ですが、その店で1日に200杯ものコーヒーをサーブするうちに「コーヒーと空間によって人々の会話が紡がれていく、そんなシーンを自分のお店でも創りたい」と、心境が変化していったと言います。

取材の日、お店に居合わせたお客さんは、「ここにくる理由は侑翼さんがいるから」と、私達に教えてくれました。住田さんは、コーヒーを淹れることで人々との繋がりを築き、理想とする場所を創り上げています。

原宿のイタリアンバールから始まり、たくさんのお客さんとの交流によって、バリスタという職業がどんどん好きになったという住田さん。「やっぱりコーヒーが好き。バリスタがコーヒーを作る姿は格好良いし、人に渡す“その瞬間の繋がり”が好きで、それに憧れてお店を始めたんです。自分が作ったお店に来た人に、ラテを出してハッピーになってもらう。それを自分が感じたいので今でもコーヒーをやっています」。

今後の展望を聞くと「このお店が上手くいっているので、新たなコーヒーショップをオープンさせたいと思っています。もし、そこが軌道に乗れば、仕事はカフェ一本に絞ろうと考えています。」住田さんの秘密基地は、これからどの様なビルドアップを魅せてくれるのだろうと、想像が膨らみます。

アイコニックなキャラクターやDIYで作り上げた空間、そしてレコードやアート。住田さんが好きだったというメカいじりの延長にある“好きなもの”が詰め込まれた秘密基地は、どこを切り取っても住田さんの人柄が垣間見えます。

自宅に友人を招くような感覚で、訪れる人が肩肘をはらずに過ごせるSHIRANKEDO。その魅力は、住田さんがサーブするコーヒーと、そこに生まれる会話。それに尽きるでしょう。

 

◆SHIRNKEDO(シランケド)
住所:兵庫県伊丹市清水3-1-6
営業時間:9:30〜16:00頃(火・金12:00〜)
定休日:不定休
HP:https://shirankedo.buyshop.jp
SNS:https://www.instagram.com/shirankedo_hyogo
CafeSnap みんなの投稿>> https://cafesnap.me/c/16833

Writing & Photo by Yohei Kida

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