自家焙煎したほうじ茶をカジュアルなスタイルで味わえるカフェ「東京和茶房」。なぜ、ほうじ茶なのか。なぜ、自家焙煎にこだわるのか。オーナーの清川さんにお話をうかがうと、そこにはこれまでの日本茶カフェとまったく違うアプローチで日本茶の魅力を伝えようと奮闘する、多くの人たちの熱意がつまっていました。

 

必要だったのは新しい着眼点。日本茶を“自家焙煎”するという発想

古き良き日本文化を身近に感じられる東京・駒場の街に、“自家焙煎”を謳う1軒のカフェがあります。名前は「東京和茶房(とうきょう わさぼう)」。

焙煎と聞くと、コーヒーを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、この店の主役はコーヒーではありません。店内に漂うのは、なんとも芳しい、そして懐かしい心安らぐ香り。カウンターの横でぐるぐると回っていた焙煎機から大きな湯気が立ったかと思えば、中から現れたのは茶色く色づいたお茶の葉です。

「東京和茶房」は、煎りたての日本茶、つまりほうじ茶をカジュアルなスタイルで楽しむことができる、自家焙煎ほうじ茶カフェ。

オーナーの清川恵美子(きよかわ えみこ)さんは、これまで20年以上にわたり、フードプランナーとして数々の飲食ブランドの立ち上げに携わってきたといいます。

「この店をオープンしたのは2018年です。当時はコーヒーブームの真っ只中で、街中にはコーヒーロースターが急速に増えていた時分でした。

煎りたてのコーヒーの美味しさやロースターによる味の違いを求めて多くの人がコーヒーショップを転々と巡り、またたく間に生活に入り込んでいく様子を目にして、こんなにも多くの人が“焙煎”や“煎りたて”に惹かれるのだと驚いたものです。

そうだ! 日本茶でも焙煎を切り口にすれば、コーヒー好きや日本茶に親しみのない人にも興味を持ってもらえるかもしれない。そんなひらめきが始まりでした」

自家焙煎ほうじ茶をコンセプトにかかげた理由を、そう話してくれた清川さん。長年、百貨店のデパ地下を中心に、惣菜、スイーツ、カフェなどさまざまな食のトレンドの現場をつくり上げてきた清川さんですが、年々厳しさを増す日本茶業界の現状がずっと気がかりだったといいます。

ペットボトルのお茶が普及し、急須を持たない家庭が増えた近年は、日本茶の売上は右肩下がり。日本茶カフェを手がけた際にも、出会った茶農家からは担い手不足や高齢化問題の深刻さ、閉鎖する茶園が後を絶たないという事実を聞き、大きな危機感を覚えていたのだそう。

店内は、誰もが気兼ねなく入れるシンプルなデザインに

「この由々しき事態をなんとかしたいと考えていたのですが、もともと日本茶に興味や馴染みのない方に真正面から『気軽にお茶を』『お茶っておいしいんですよ』とアプローチしたところで、なかなか受け入れてもらえないだろうなとも思っていました。

そんなとき、“焙煎”というヒントに出会ったんです。自家焙煎の日本茶カフェなら、ペットボトルでしかお茶を飲まないひとにも興味を持ってくれるんじゃないかって」

 

これまでにないチャレンジをサポートしてくれたのは茶農家や茶師たち

大きな後押しとなったのは、全国の茶農家や茶師たちの協力と応援だったといいます。茶商でも茶農家の生まれでもない清川さんとって、自分の力だけで日本茶カフェを立ち上げるのはとうてい困難なこと。しかし彼女には、大きな武器がありました。それが、20年以上培ってきたフードプランナーとしてのキャリアとネットワークです。

「これまで出会ったフードプランナー仲間や茶業者の皆さんに声をかけて想いを伝えたところ、『おもしろい取り組み! ぜひ協力したい』とたくさん心強い言葉をいただきました。

茶葉を送ってくださった農家さんもいて、中でも、宮崎県の井ヶ田製茶北郷茶園の田村秀悟さんには、大変親切にご指導いただいて本当に感謝ばかりです」

コーヒー用の焙煎機を日本茶に合わせてカスタマイズ。店内には常にほうじ茶のいい香りが

もし、東京和茶房が単に“ほうじ茶専門カフェ”であれば、美味しく煎り上がった茶葉を仕入れるだけでよかったのでしょう。しかし、清川さんが目指したのはあくまで自家焙煎の“日本茶ロースター”。まだ青い状態の茶葉を仕入れ、自分たちの手で仕上げの加工をしなければなりません。

知識と技術の習得はもちろん、店の看板をはるほうじ茶づくりにはとにかく苦労したと振り返ります。どんな茶葉を仕入れ、どのように焙煎し、どんな味わいで提供するのか……。なかなか納得いくものができず、途方に暮れたことも。

それでも焙煎したての芳醇な香りと味を届けるために、自家焙煎だけは譲れなかったと清川さんは力強く語ります。

「煎りたてのほうじ茶の香りは格別です。それをどうしても知ってほしくて。普段、日本茶に馴染みのないお客さまを想定していたので、できるだけ多くの方に美味しいと感じてもらえて親しみやすく、それでいて印象に残るほうじ茶を目指しました。焙煎度合いを変えたときに、味・香り・色の違いがわかりやすいことも重視したポイントのひとつです」

試作を重ねた末にできあがった「東京和茶房ブレンド」は、焙煎の度合いで3種類をラインナップ。「LIGHT(ライト)/浅煎り」はほんのりと青みが残ったさわやかな味わいに、「MEDIUM(ミディアム)/中煎り」は同じ茶葉とは思えないほど一気に甘みと深みが増しほどよい飲みごたえ、まるでアイスコーヒーのような色合いの「DEEP(ディープ)/深煎り」は焦げる寸前まで煎ることで力強い香味とコクを引き出しました。

 

見て、香って、味わって。ほうじ茶の新たな魅力に出会えるオリジナルメニュー

「ほうじ茶3煎 飲みくらべセット」(924円 税込)。色の違いも楽しんで

東京和茶房は、あくまで日本茶に触れてもらうための入り口です。味はもちろん、香り、色など五感で楽しんでもらいたいと常にアイデアを練り、バリエーション豊かなメニューを展開しています。

前述した3種のほうじ茶の飲み比べができる「ほうじ茶3煎 飲みくらべセット」は、お客さまからの反響がもっとも大きいメニューのひとつ。

それぞれの味わいを体験したら「LIGHT」には山椒を、「DEEP」にはシロップを加えて味変させるのも東京和茶房発案の楽しみ方です。「これが全部ほうじ茶なんて驚き」「こんなアレンジ方法があるんですね」などの喜びの声が多く聞かれるのだそう。

「ほうじ茶ルーロー飯 サラダ付き」(880円 税込)

さらには、ほうじ茶を使った食事メニューも。現在は「ほうじ茶ルーロー飯」と「ほうじ茶ハヤシライス」の2種類を提供しています。ほうじ茶を味のベースにすることでグッと深みが増して、コクのある仕上がりになるのだとか。

「わたし自身、お店を始めてからいろいろ試作をする中で発見したほうじ茶の魅力もたくさんありました」と清川さん。

フルーツと合わせたり、スパイスを加えたり、ドレッシングにしたり……、オープンから3年が経った今でも、どうすればより興味や親しみをもってもらえるか、もっとほうじ茶や日本茶の美味しさが伝えられる方法はないかと、日々チャレンジの連続だといいます。

 

コーヒー好きの人にも味わって欲しい“煎りたて”のほうじ茶

日本茶ブーム・ほうじ茶ブームといわれる昨今、カジュアルなスタイルで日本茶が楽しめる店も増えてきました。しかし、まだまだ日本茶の消費量は少ないのが現状です。それでも清川さんは、一度触れるきっかけさえあればその美味しさや魅力に気づいてもらえると信じています。

「『ずっと飲んでいたいくらい好き』と、ほうじ茶ラテを頻繁に求めてくださるお客さまも多くいて、少しずつでも日常にお茶を取り入れてくだっているとのだと思うと本当に嬉しいです。

煎りたてのほうじ茶は、本当にいい香りなんですよ。コーヒーがお好き方にもきっと気に入っていただけると思います。いつでも、煎りたての茶葉を用意してお待ちしています」

ほうじ茶ラテ (550円 税込)

 

◆東京和茶房(とうきょう わさぼう)
住所:東京都目黒区駒場4-6-2 Y-5 YAMAGATAYA 1F
TEL:03-6407-0622
営業時間:平日 11:00〜17:00/土日祝 11:00〜18:00
定休日:月曜
HP :https://www.tokyowasabo.com
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取材・写真・文 RIN

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