横浜中華街の観光名所・関帝廟(かんていびょう)からほど近い路地裏に、ここにしかないROUROU Cafe(ロウロウ カフェ)がひっそりと佇んでいます。ピンク色の通路をたどって路地裏に入り込むと……、異世界へと開かれた扉がそこにありました。
独自の文化と美術が発展したアジアのどこかにある“未知の国”
アジアのどこかにある朧朧国(ろうろうこく)。古くはヨーロッパや中国の影響を受け、やがて争いのない文明を築きあげ、独特の文化や美術を持つ、精神的にも文化的にも進化した未知の国。その朧朧国から商品をインポートする──おとぎ話のようなストーリーをブランドコンセプトとしているのが、横浜中華街発のアパレルブランド「ROUROU(ロウロウ)」です。
ROUROU Cafeは、そんなROUROUがプロデュースするカフェということで、かなり独創的。ピンク色に塗られた通路を進んで行き、扉を開けると飛び込んでくる、鮮やかな色、柄、アート。壁には木がモザイク調にはめこんであり、電気コードがむき出しの天井には木材が縦横無尽に行き交って……まるで異世界空間に迷い込んだよう。
色on色、柄on柄という、カオスな中にもまとまりのある空間を創り出しているのは、さすが、アパレルブランドプロデュースならではのセンスの良さを感じます。
「衣食住、すべてに関わりたかったんです」と、社長の石河陽一郎さんはROUROU Cafeをオープンした当時のことを振り返ります。
「ここはもともと倉庫として利用していました。手狭になってきたので新たに倉庫を借りることにして片づけたところ、大家さんがクッキングスクールを開いていた時に使っていた立派なキッチンが現れて。じゃあ、カフェをやってみようか、と」
2000年にファッションブランドを立ち上げた時からカフェもやりたかった、という石河さん。水回りなど重要な箇所のみプロに頼み、自分たちでできる内装はスタッフ総出でDIYして、2014年4月、念願のカフェオープンにこぎつけました。
カオスな空間を彩るのは、オリエンタルな雰囲気を醸し出すクッションやランプシェード。ROUROUのファッションアイテムをつくるためのオリジナルデザインのプリント生地を使っています。生地の原画を描いているのは、石河さんの妻でモデル・デザイナーの早園マキさん。石河さんがその原画をレイアウトしています。
夫婦で創り上げたオリジナルデザインの布も活用し、“朧朧国のアーティストが集う場所”をコンセプトとしたインテリアが出来がりました。
アジア料理にインスパイアされたスイーツやカフェごはん
ROUROU Cafeのメニューもインテリア同様、なかなかにカオス。スイーツは、“中華街のカフェ”らしくオリジナルの木型で作った月餅をはじめ、濃厚なマンゴープリン、杏仁プリン、チャイプリン、烏龍茶のチーズケーキがあると思えば、ブルーベリーレアチーズケーキ、ガトーショコラ、季節のショートケーキ、アイス、シャーベットといった洋菓子まで。
しかも、単品から盛り合わせ、アフタヌーンティーセットまで、ひとりで訪れても、ふたりで訪れても、何度訪れても楽しめるようになっています。
特におすすめのスイーツを伺うと、お店のオーブンで焼き上げるガトーショコラを挙げてくれました。苦みの強いチョコレートを効かせ、ココアの量や銘柄を変えるなど何度も検討し、少し重めの仕上がりを目指したのだとか。
「オーダーいただいてから生クリームをホイップすることにもこだわっています。ちょっとお待たせしてしまいますが、風味の違いを感じていただけると思います」
フードメニューに至っては「僕が好きなものばかりなんです」と、石河さんは笑います。アジアングラタン、枝豆のキーマカレー、角煮パオサンド、シンガポールチキンライス、パクチーカレー。どれも試行錯誤して完成したのだそう。
中でも石河さんのイチオシは、シンガポールチキンライス。幼少期にシンガポールに住んでいたことから、思い出の味をもとにレシピを開発しています。クッキングスクールの講師だった大家さんからのアドバイスを受け、改良を重ねました。
ほろりとやわらかな蒸し鶏、チキンスープで炊いたジャスミンライスの周りには、スイートチリソース、パクチーソース、中国醤油、ガーリック&ジンの4種のソースが。まるでROUROU Cafeのインテリアのようなカラフルなソースを、好きなように組み合わせていただきます。
インテリアもメニューも、石河さんが幼少期に過ごしたシンガポールの影響を受けているのでは……?
「シンガポールは、マレーと中国、ヨーロッパの文化をミックスしたプラナカン文化があふれている街。そういったいろいろな文化を受け入れることが、知らず知らずのうちに身体に染みついているかもしれませんね。」
街づくりの活動をとおして横浜・中華街のすみずみにまで光を当てたい
横浜中華街は約150年の歴史を持つ、日本最大のチャイナタウンで、500m四方のエリアに500店舗以上が軒を連ねています。それらの店舗を取りまとめているのが、横浜中華街発展会協同組合(以下、発展会)。横浜中華街のルールづくりやイベントの運営など、横浜中華街の発展のために活動している協同組合で、2022年現在、約390の会員が加盟しています。
石河さんは、発展会の専務理事でもあり、広報担当として魅力あふれる街づくりにも取り組んでいます。
「メディアでは中華料理店ばかりがクローズアップされがち。でも、中華街には中華料理以外の料理店も、ウチ(=ROUROU)のような雑貨店も、占いもあって。すみずみにまで光を当てたい、という想いで活動しています」
その結果、横浜中華街の路地裏にも脚光が当たるようになりました。
「メディアで取り上げてもらっても、その効果は限定的。通りすがりに見つけてもらえるような場所ではありませんので、今日来てくれた方にまた来てもらえるように、『心地よい接客を心掛ける』『美味しいものを提供する』という、飲食店にとって当たり前のことを徹底しています」
「ここにカフェがある」と知らなければ、なかなか入り込むことのない横浜中華街の路地裏。異世界へと続く扉を開けると、カオスな「美味しい」メニューが待っています。
◆ROUROU Cafe(ロウロウ カフェ)
住所:神奈川県横浜市中区山下町130-12
営業時間:12:00~18:00
定休日:無休 ※臨時休業あり
HP:https://www.rourou.com/cafe/
CafeSnap みんなの投稿>> https://cafesnap.me/c/12030