CafeSnapの大井がSatén japanse tea の小山さんと響さんにお話を伺っているプレミアムコラム。Vol.2では、ふたりの出会いや、お店を一緒に始めることになったきっかけ、これからの目標について伺いました。
和の空間にあえて融合させた北欧のエッセンス
大井:初めてお店に伺った時、日本茶スタンドなのに洋楽がかかっていたり、椅子にはベルベットの素材が使われていたりと空間にもオリジナリティを感じました。この空間を作るために、どんなところにこだわりましたか?
響さん:意識していたのは“日本の日常に溶け込むスタンド”です。ただ王道の和テイスト“だけ”にしてしまうと、当たり前のお茶屋さんになってしまうので、あえて壁の色や照明に“北欧のテイスト”を取り入れています。
カウンターの和紙や、座席のベルベット、壁の色やインテリアは僕が選んでいるのですが、なにを選ぶのにも、基本2時間コースでしたね……(笑)
大井:北欧のエッセンスを取り入れたのはなぜですか?
響さん:日本と全く違う国ですが似ているところがあると思ったからです。日本と同じく飲料の先進国で、コーヒーも高品質、両国とも発酵系の料理を出していたりと、日本との共通点を感じられたんです。それから自分が北欧のテイストが好きだったこともありますね。和の空間の中にうまく融合できたと思います。
ふたりの職人を引き寄せた課題
大井:私は小山さんと響さんのことを前のお店で働いているときから知っていたので、ふたりでお店を作ると聞いた時はとても驚きました。おふたりが知り合ったのはいつ頃ですか?
小山さん:以前からお茶関係に共通の知り合いがいたのですが、本格的に話すようになったのは僕が前職でオープンしたUNISTANDに響さんがお客さんとして来てくれた頃からです。
大井:どんな話をされていたんですか?
小山さん:例えば、「なぜ日本茶はコーヒーみたいに広がらないのか」を響さんに相談していました。お茶は日本の家庭にはすでに普及していて飲む文化はあるのに、コーヒーのように“外で飲む”、“スタンドで飲むことがかっこいい”とはならない。日本茶は外で飲む文化がないから、日本茶カフェはできてもすぐに閉店しまうんです。「日本茶もコーヒーも同じドリンクなのになぜ広がらないんだろう」と、話していました。
響さん:僕は前々職のとき、フランスのファッションブランドが運営するCafé Kitsuneで働いていて、店のリニューアルとともに抹茶ラテを提供することになったんです。色々なお店で飲んでも、砂糖が入っていたり、抹茶がダマになっていたりと、自分が納得できる抹茶ラテに出会えなかったので、どうしたら美味しい抹茶ラテが作れるのかを小山くんに相談していました。
同時に、その頃から「日本の生活に違和感なく溶け込むスタンドはどんなものなのか」ということを考えていて、スタンド形式で日本茶を提供しているUNISTANDに興味を持ちました。
日本茶を伝える“淹れ手”としてのこだわり
大井:そういった話の中での意見交換が、Saténを作ることに繋がっていったのかもしれないですが、前職で小山さんはUNISTANDの店主をされていましたし、響さんはブルーボトルのバリスタトレーナーをされていました。そのキャリアを切り替えてまで、一緒にお店をやろうと思ったのはなぜですか?
響さん:いくつかありますが、まず“こだわりどころが近かった”というのはありますね。最初に、抹茶ラテを作ろうとなったとき、小山くんは抹茶を10種類用意し、僕は牛乳を10種類用意したんです。
大井:え!!おふたりともマニアックですね……(笑)
小山さん:「素材の味を引き出して作る」というところが同じなんですね。響さんは牛乳以外の他の液体物も詳しくて、コーラやトニックウォーターの種類も数多く知っています。それらを抹茶やお茶とあわせたとき、日本茶にすごく広がりが生まれると感じました。
響さん:それから作ったドリンクを飲んだとき、感覚的に美味しいと思うものが近いというのもあります。美味しい時だけでなく、「なにかがちょっと……」と思う時も一緒なのでブレがないんですよね。
小山さん:ふたりとも“淹れ手”であるということも共通点です。響さんは豆を焙煎するロースターではなくコーヒーを淹れるバリスタ。僕も茶葉を販売することより抽出にフォーカスしています。
日本茶が広がらない理由の一つは、コーヒーのバリスタと違って、日本茶は淹れ手が少ないことです。日本茶を追求する人は、お店よりもお茶のインストラクターになる人が多い。そうするとワークショップでしか丁寧に淹れられたお茶を飲むことができません。
売上のことだけを考えたら、茶葉を販売する店にしたほうががいいんでしょうけど、僕たちは日本茶を伝えるために、“淹れ手”であることにこだわっています。
大井:日本茶の味や、作り手のこと、その魅力を広めていくために“淹れ手”を選んだというのは素敵ですね。それから、おふたりの美味しさの感覚が近かったというのも素晴らしい偶然!
地域の日常に溶け込む日本茶スタンドを目指して
大井:オープンして数ヶ月ですが、これからの目標はありますか?
小山さん:日本茶を日常的に飲んでいただける文化を形成していきたいですね。そして、日本茶のスタイルを確率するカフェを提案していきたいです。
響さん:ずっとコーヒーをやってきて思うのは、コーヒーを飲める店が増えてきている中で、近隣の人が繰り返し行きたくなるお店はなかなか増えていないということです。Saténは、西荻窪の人の日常に溶け込むお店にしていきたいですね。気分によって、お茶を飲んだり、コーヒーを飲んだり、夜はお酒も飲んで……。生活のリズムにあわせてどんなタイミングでも行きたくなる、そんな店を作っていきたいです。
◆Satén japanese tea (サテン ジャパニーズ ティー)
住所:東京都杉並区松庵3-25-9
営業時間:10:00〜21:00
定休日:月曜
メニュー:緑茶(ブレンド) 420円〜、抹茶ラテ 520〜円、砂炒りほうじ茶ラテ 420円〜、煎茶トニック 700円、ジブラルタル 450円、あんバターサンド450円 etc.
HP: https://saten.jp/
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Interview&Writing:Ayako Oi
Photo:Kumiko Nakakuki