喫茶文化が根付く神田錦町で2015年から開催している「COFFEE COLLECTION」が約4年ぶりに戻ってきます。「COFFEE COLLECTION 2023」の最大の特徴は、90店のロースターから選ばれた店などが集まる“シングルオリジンコーヒー”のみのフェスティバルということ。高品質な豆の選定、焙煎、抽出など、カップ一杯のコーヒーになるまでのすべて過程において、“こだわりと情熱”をもって作られた世界トップクラスのコーヒーを味わうことができます。
ここでは出店店舗を決めるために行った審査会の様子をお届けしていきます。今回はWashed部門のジャッジをつとめた中村圭太さん(LiLo Coffee Roasters)、金子将浩さん(WEEKENDERS COFFEE)、岡田章宏さん(Okaffe kyoto)を審査会後にインタビュー。1位、2位、そして10位以内で印象的だったコーヒーと、Washedのコーヒーの魅力についてうかがいました。
◆Washed部門 TOP10
― Washed部門の審査、お疲れ様でした。まずは、30店舗のコーヒーをカッピングして全体的な印象や傾向、感想を教えてください。
金子将浩さん(以下: 金)ゲイシャが多かったですね。予想ではアンダー(アンダーディベロップメント・焙煎不足)が多いのかなと思っていましたけど、みなさんしっかり焼けていると感じました。
岡田章宏さん(以下: 岡)僕もWashed部門なので、みんなもっと軽く軽く焼いてくるんだろうなと思っていたんですけど、意外と火も入っていて、それでいてビターなものは少なかったです。
中村圭太さん(以下: 中)みなさんすごくいい豆を選んでいる中で「こんなにも違いがあるんだ」と驚きました。いい豆を選んでよく焙煎できているロースターも、もうちょっと良くなりそうというロースターもありました。
―まずはWashed部門 1位のIMOM COFFEE ROASTERSの「Guatemala Rosma」についてお聞きします。どんなところが評価ポイントだったでしょうか。
中 :すごく良かったですね。ネクタリン、ピーチ、キャンディなど感じたフレーバーの種類が多くて、甘みがしっかりあってシルキー。冷めてきてもクリーンカップが持続していました。生豆の質も高いんだろうなという印象があって、点数はすごく高くつけました。
岡 :僕は一番高い点数をつけましたね。甘さ、冷めてからもう1回の飲みに行った時に質が落ちてない。ハニーやオレンジティーのようなフレーバー。一貫して僕の好きなティフレーバーがあって、甘さもずっとあった印象です。
金 :ゲイシャが多い中で、ちゃんと厚みがあって、甘さがある。 フレーバーはトロピカルフルーツ、パパイア、ハーブなど、コンプレックスな感じでした。結構、落としどころの難しい豆なんじゃないかなと思いましたし、グアテマラでこういう豆はなかなかないので面白かったです。
― 2位のGLITCH COFFEE&ROASTERSの「Colombia Narino EL Porvenir」についてはいかがでしたか。
金 :温かい時も冷めてからも一貫してパワフルで ジンジャー、トロピカルフルーツ、ライムっぽい柑橘感がありました。複雑で美味しかったです。ゲイシャの中でも、「ただゲイシャ」という感じではなくて、パワフルさのあるゲイシャでした。
岡 :僕はマンダリオレンジ、ライプチェリー、フレッシュな印象が強くて、その中に厚みがあって一美味しかったです。
中 :ゲイシャが多い中でボディと厚みがあって甘さに奥行きもある。ゲイシャのいいところだけを、しっかりとカップに出せているという感じでした。
― 続いて、10位以内のコーヒーでほかに印象的だったもの、好きだったものがあれば教えてください。
金 :僕はTAKAMURA COFFEE ROASTERSの「Colombia Cauca Otilia Anturi」。時間の経過の中で、いろいろなフルーツが出てきて、冷めてきてからはトロピカルフルーツやドライマンゴーも感じました。質感が綺麗だったし、透明感があって、落としどころをちゃんとわかっている焙煎だなと。僕は個人的に1番好きでした。
岡 :僕はMÖWE COFFEE ROASTERSの「Panama Boquete Abu」が良かったです。マンダリンオレンジのフレーバーで甘さもある、アフターの長さも良かったなと思いました。こういうゲイシャ、昔から好きなんですよね。
中 :個人的に好きだったのは自家焙煎珈琲屋カフェベルニーニの「Bolivia Floripondio」。これだけ発酵感がすごかった。Washedなのに全然Washed感がない、カシスやプルーンのような発酵感がありました。「これNaturalちゃうんか」と思うような豆をチョイスされている。その攻めた感じが個人的に好きで、面白いなと思いました。
金 :ちなみに審査会ではみんなクオリティの高い豆で勝負してきているので、焙煎はもちろんですが、大切なのはそれだけじゃないと思っていて。もっと大事なのはどうエイジングを持ってくのか。いつ袋に豆を詰めるのかも含めて、ピークのもって行き方はまだまだ改善しようがあるのかなと思いました。
― あらためて、Washedのコーヒーの魅力とはなんでしょうか。
中 :Washedのコーヒーは生豆のポテンシャルと焙煎、エイジングの良し悪しが顕著に出やすい、小細工やごまかしが効かないですよね。もしサプライチェーンのどこかのプロセスで手を抜いているところがあると、最終的なカップに一番現れやすいのはWashedかなと。そういう意味で、「いかに美味しいWashedのコーヒーを作れるか」を競うこの部門はロースターとして挑戦しがいがあります。ここで評価されるのはロースターとしては嬉しいことだろうなと、僕は思いますね。
岡 :WashedはNaturalやAnaerobic(アナエロビック)と比べると、素材が持つ香りやフレーバーは強くないと思います。もちろんキャラクターや個性はいろいろありますけど。その分、焙煎や抽出で差が出やすいという印象があります。
Washedに 求めるものはアフターテイスト。クリーンさというか、心地よく終わる感じがとても好きです。ガツンとくるものよりも「優しく、美しく。うん、美しいっていいですよね……(うっとりな目)。」
金 :Washedってすごく難しいと思うんですよね。一言でWashedと言っても、Naturalと比べたらそれほどの発酵感はないですけど、プロセス(精製処理の過程)で発酵させる工程は絶対的に存在するので。「Washedだから発酵している感じがないか」っていうと、そういうわけじゃない。
作り方やプロセスもその国によって違ったり、発酵時間も異なる、というのを知ると、昔、焙煎を始めた頃は“Washedの焼き方” 、“Naturalの焼き方”みたいな考え方をしていましたけど、Washedの中にも多様性があるし、それに適した焙煎もそれぞれあると考えるようになりました。
こういった審査会はどうしても、派手な豆をチョイスしがちなんですが、Washedの良さは岡田さんが言ったように“柔らかい感じ”。そしてその中にも個性があると思います。
それからキャッチーではないんですけど、“綺麗さ”という意味で、僕はWashedが一番インパクトがあると思っています。スペシャルティコーヒーのいいところは“綺麗さ”で、エチオピアやケニアだったらその国の特性、中南米だったら生産者の特性が出てくる。綺麗だからこそコーヒーの個性や多様性がよりくっきりとわかりやすいと思うんです。
― その他にCOFFEE COLLECTIONに対してご感想があればいただけますか。
金 :今の時期(審査会を実施した2月〜3月)は新しいクロップが少ないから、ロースター達にとってはちょっと時期がかわいそうかなと思いました。ゲイシャが多かった理由は時期もあったかと思います。次回は新しいクロップが入ってくる夏に審査会をするのがいいんじゃないかなと。そうすれば、コーヒーを通して、ロースターの意図がもっと見えるようになるのではと思います。
― 開催の時期については、来年に向けて検討しますね。去年から今年のアップデートでいうと、参加ロースターにフィードバックをお返しすることにしました。
中 :フィードバックが返ってきたらロースターは嬉しいですよね。やっている側としても、ちゃんと返したいなって思うので。こういう審査会はいいですよね、僕もロースター側で参加してみたいと思いました。楽しかったです。
岡 :こんなに美味しいコーヒーをいろいろと飲めて楽しかったですね。
金 :楽しかったです。そして点数で見るのもいいですが、ぜひ自分が好きなコーヒーをそれぞれが見つけてほしいなと思いました。
― Washed部門のジャッジのみなさん、ありがとうございました!
世界最先端のコーヒーを味わえる「COFFEE COLLECTION 2023」開催!
2023年5月3日(水)、4日(木)に東京・神田錦町で開催される「COFFEE COLLECTION 2023」は90店のロースターから選ばれた店が集結。高品質な豆の選定、焙煎、抽出など、カップ一杯のコーヒーになるまでのすべて過程において、“こだわりと情熱”をもって作られた世界トップクラスのコーヒーを味わうことができます。
また豪華登壇者を招いたコーヒーの知識を深めるセミナーもラインアップ。ゴールデンウィークの始まりは、ぜひ神田錦町で世界最先端のコーヒーをお楽しみください。
◆日時
2023年5月3日(水)11:00〜18:00、 4日(木) 11:00〜17:00
◆会場
第一会場:KANDA SQUARE(東京都千代田区神田錦町2丁目2−1)
第二会場:竹橋スクエア(東京都千代田区神田錦町2-3)
◆HP
http://coffeecollection.tokyo
Photo: Yohei Kida
Interview & Editing: Ayako Oi (CafeSnap)