2018年12月「haveAnice Festival」が台湾の松山文創園区で開催されました。今回はこれまで別々に行っていた「Culture & Coffee Festival」と「Culture & Art Book Fair」をはじめて同日に開催。台湾と日本から約160店のコーヒーロースターや、出版社、雑貨店などが参加しました。
今回はアフターレポートとして「Culture & Coffee Festival」の様子と注目の2店をご紹介。さらに、フェスティバル主催者の小路 輔 氏をインタビューしました。
<2018年12月1日、2日に開催されたhaveAnice Festivalの様子>
おばあちゃんバリスタと若者たちのコラボレーション・Oh Old!心齡感-鵪鶉鹹派X熟齡吧檯手
Oh Old!は台南にある、70歳以上のおばあちゃんがバリスタとして活躍するカフェ。若者たちがエプロンなどのファッション、デザイン面、そしてコーヒーの技術面をサポートしています。
日本と同じく、高齢化の問題に直面している台湾。若手スタッフは「家にこもってつまらない日々を過ごしているお年寄りに、外にでて毎日を楽しんで欲しい。それがコンセプトになっている」と話します。
おばあちゃんバリスタはエスプレッソを抽出し、ほんのりラテアートも!「若者といっしょにコーヒーを作れて楽しい!」と可愛い笑顔を見せてくれました。
伝統のある漢方とコーヒーを掛け合わせて現代風にアップデート・元益與寶來
台湾で昔から飲まれてきている漢方。具合が悪い時だけでなく、日々の体調を整えるため日常的にも取り入れられてきました。しかし、昨今では飲みやすさの面から漢方から離れていく人も。
そこで漢方をより手軽に、飲みやすく提案しているのが元益與寶來。例えば、台湾を代表する漢方のひとつ、ハッカクを混ぜた“ハッカクコーヒー”や、手軽に作れるセットなどを作り、漢方の新たな魅力を発信しています。
SIMPLE KAFFA
暗室微光
CAFE SOLE
延べ2万人が来場した今回のhaveAnice festival。その主催をしているのが、台湾のFujin Tree Cafeを経営し、2014年から日本と台湾の架け橋になる活動をしているFujin Tree Groupジェネラルマネージャーの小路輔 氏。
小路氏はビジネスパートナーのジェイ・ウー氏と2014年に台湾で会社を創設。その前にはJTB やZOZOTOWNで働いていた経歴があります。旅行、ファッションの業界を経て、なぜ台湾で会社やカフェを作り、haveAnice festivalを開催することになったのか。CafeSnap の大井が伺いました。
台湾人としてのアイデンティティが問われ、オリジナルの文化が創られ始めている台湾
大井:2018年の春から「Culture & Coffee Festival」に参加させていただいていますが、台湾では日本語を話せたり読める人もいて、親日の方が多いように感じています。
小路さん:台湾は日本、オランダなどに統治された時代がありました。日本が統治していたのは1895年〜1945年までの50年間。私は、親日というよりかは、台湾人の多くに“日本へのルーツや懐かしさのようなもの”を感じている人が多いと思っています。
大井:懐かしさ……というのは、例えば、今の若い人たちが昔の喫茶店に感じるノスタルジーのようなものでしょうか?
小路さん:そうですね。ちなみに、台湾でも日本の喫茶店は人気があるんですよ。
大井:2014年に小路さんはZOZOTOWNを辞めて、台湾で仕事を始められていますね。台湾に注目したのはなぜですか?
小路さん:JTBの時代には、台湾人観光客の誘致を担当していて、ZOZOTOWNでは、世界中に日本の服を販売する仕事をしていました。結局、日本人と体格が似ているアジア圏との繋がりが強かったのですが、特に台湾は日本と相性の良い国だと感じていました。
それから社会的にも変化があり、2014年頃から台湾のさまざまな分野で「“台湾らしさ”」が重視される流れになりました。そこから台湾は大きく変わり始めたんです。
具体的には、グラフィックデザインナーや、フードコーディネーターなど、アートや食、インテリア、ファッションに力を入れる人が増えてきました。“文創”と呼ばれているのですが、2014年はまさに、“台湾ならではの文化形成”が始まったスタート地点。かつて日本で明治維新が起こったように、「文化ができて、変わっていく、その時期を自分で体験したい」と思い、台湾で仕事を始めました。
一点主義のブームでなく、定着する“文化”を作りたい
大井:小路さんにとって文化とはなんでしょうか?
小路さん:“トレンド・ブーム”の反対にあるものですね。台湾では、ブームは起こりやすいのですが、すぐに飽きられるという特徴もあります。ブームのような一点主義ではなく、全体の底上げ。物事を定着させるために、文化が必要だと思います。そして「文化が先行すれは、ビジネスはあとからついてくる」という風にも考えています。
大井:台湾の方が飽き性というのはなぜでしょうか?
小路さん:日本と比べると人口が少ないので、情報が広まるスピードが早いこと。台北にトレンドが集中していること、また、InstagramやFacebookなどSNSが圧倒的な力を持っているからでしょう。いまや、何を調べるにも「インスタ」そういう人は少なくありません。
大井:haveAnice festivalは、もともと「Culture & Coffee Festival」と「Culture & Art Book Fair」のふたつのイベントですよね。その両方に「Culture」の言葉が入っている理由がわかりました。今回のようなフェスティバルを開催しているのはなぜですか?
小路さん:最初は、自分のお店の前で小さなマーケットを開いていたんです。それは利益目的でもなく、純粋に台湾中のお店に参加してほしくて、必死にアプローチして出店してもらう時期が2年ほどありました。コーヒーを含めて「マニアのためのものでは、文化になりにくい。多くの人が参加できる場を作ろう」と、マーケットを大きくしていった結果、フェスティバルを開催するまでになりました。
大井:出店店舗は日本のお店と台湾のお店、ちょうど半々ぐらいでしょうか?
小路さん:はい、ほぼ半分ずつですね。日本と台湾のカフェが同じぐらいずつ参加することで、文化の違いがより見えると思いましたし、店や人の交流が生まれると考えました。
大井:実際、私も2回目の参加ですが、前回参加していたお店の方や、お客さんに再開できて、嬉しかったです。
震災の時に日本を助けてくれた台湾に恩返しを
大井:日本や台湾をつなぐ架け橋として、フェスだけでなくメディアやカフェ、日本企業の誘致など会社としては様々な活動をされていますよね。なぜそこまで台湾の人々や文化の発展に力を注ぎたいと思ったのでしょうか?
小路さん:震災がきっかけです。私は震災の時にJTBで働いていて、日本に来る台湾人観光客を増やそうという企画を立てていました。そんな中、地震の直後に台湾はどこよりも早く、日本に200億円以上の寄付を決定しました。その時から、自分らしい方法で、台湾の人の生活を豊かにしたい、喜んでもらえることがしたい、お返ししたいと思うようになりました。
大井:有言実行されていますね! 最後に、台湾でこれまでフェスティバルをやってきてよかったことを教えてください。
小路さん:終わったあとに、台湾と日本の店舗同士などで、様々なコラボレーションが生まれていることですね。私のほうにはあんまり連絡がこないので、ぜひコラボレーションが実現した時は、教えて欲しいです(笑)
来年の開催にあたり、出展者募集の情報などはFacebookページで発信予定とのこと。ぜひこちらもフォローを!
◆haveAnice festival
HP: http://www.haveanice.com/
Facebook: https://www.facebook.com/haveanice/
Writing by Ayako Oi(CafeSnap)