自家焙煎コーヒーと手作りおやつの店「cafe 2u」。自分の力でひとつひとつ着実に道を切り開き、若くして店を開いた店主・菊池勇輝さんがこの場所に思い描いたのは、日常の中でほっと一息つける場所。「cafe 2u」は、「to you」の名にふさわしく、あたたかな空気で満ちています。

 

「自分で店を持ちたい」。その人生設計は学生時代

2020年9月15日。東中野の住宅地に、1軒のカフェがオープンしました。民家が密集する路地の一角で、スカイブルーのドアが目を引く「cafe 2 u(カフェ トゥー ユー)」。「to you=あなたに」を意味する、やさしい名が付けられたその店は、自家焙煎コーヒーと手作りおやつのカフェです。

すべてのものが、“自分の手からお客さまへ”届けられることから「to you」という名前にしたと話すのは、店主の菊池 勇輝(きくち ゆうき)さん。「口下手なのでお話するのはあまり得意ではないのですが、自分ひとりの店だからこそ、丁寧に心を込めてコーヒーやおやつをお届けできればと思っています」。

少し照れくさそうにはにかむ表情と、穏やかな声色が印象的な菊池さんは、現在27歳。高校を出て専門学校に通い始めたころから、自分の店を持つことを考えていたそう。「人生設計を立てていたんです。20歳で学校を卒業したら、いくつかの店で2、3年ずつ経験を積みながら、エスプレッソドリンクやコーヒーの焙煎、スイーツ作りを学ぶつもりでした。当初は28歳で物件を探し始めて、30歳までに店を始めるという計画で」。

しかしフタを開けてみれば、実際に「cafe 2u」をオープンしたのは、26歳のとき。「だいぶ、前倒ししちゃいましたね(笑)」と笑う、菊池さん。それまでは5年ほど、西東京エリアを中心にカフェを数店舗展開する、ライフスタイルショップの会社に勤めていたといいます。

 

比べず、競わず。自分に必要なスキルをひとつひとつ手に入れる

さまざまなスタイルのカフェの運営に関わっていたため、生活雑貨やインテリアグッズの取り扱い、コーヒー豆の焙煎など、調理や接客に留まらない経験ができたことは、大きな財産になったと語る菊池さん。「系列店を回ることで、欲しかったピースが自然とそろっていった」と、振り返ります。

温和な性格のため、ガツガツと積極的に前に出たり、誰かと競い合ったりする方ではないといいますが、先輩や仲間の仕事を見て、自分のできること・やるべきことを考えて、コツコツと身につけていくのは得意。そんな堅実な仕事ぶりが、周りから信頼や評価を得たのでしょう。いろいろな業務を任せてもらうようになり、最終的には全店舗分の焙煎を担うまでに。着実に力をつけていったのです。

「独立」の2文字に心が大きくシフトしたのは、ひょんなことがきっかけ。「台湾のコーヒーイベントに同行したときに、現地の方が『コーヒーを淹れている姿がすごくかっこいいね』と、片言の日本語で一生懸命に伝えてくれたんです。素直に嬉しかった。自分自身が楽しめていないと、『かっこいい』など思ってもらえませんからね。自分がいちばん輝けるかたちでこの仕事をやりたい、一からすべて自分で作ったものでチャレンジしたい、と思うようになりました」。

こうして、菊池さん自身の力によって少しずつ早く回り始めた、人生設計の時計の針。“あなた”がほっと安らげる「日常の一息」の場として、「cafe 2u」をオープンするに至ります。

 

日常の「美味しい」の中に、ちょっとだけ自分の個性が溶け込んでればいい

「ラテアートも、自宅にエスプレッソマシンを購入して、毎日コツコツ練習した」と菊池さん

自身でコーヒー豆の焙煎を手がける上に、ラテアートにも力を入れるほどですから、「cafe 2u」は、さぞコーヒーが絶対的な主軸のカフェかと思いきや、菊池さんから返ってきたのは少し意外な答え。

「自家焙煎コーヒー店ではあるのですが、必ずしもコーヒーが主役でなくていいと思っているんです。お菓子が主役でコーヒーは“ついで”でもいい。大切にしたいのは、この店が、お客様や自分にとって、生活の延長線にあること」。

オリジナルのブレンドは2種。その他にシングルも数種類そろえる。ドリップバッグも

浅煎りのスペシャルティコーヒーが広く知られるようになった今、焙煎士たちは、豆の個性をいかに引き出すかを競い合う時代といってもいいでしょう。いわば、“コーヒーファースト”。菊池さんがコーヒーにのめり込んだきっかけも、そのフレッシュな美味しさに感激したことだったそう。

しかし彼にとって毎日飲みたいと思うコーヒーは、もう少しやさしくて飲みやすいもの。「cafe 2u」では、あえて中煎りから中深煎りをメインにし、次の日も飲みたくなるようなスッキリした美味しさに仕上げています。

専門家やコアなコーヒー支持層には、やや物足りないという人もいるかもしれません。それでも菊池さんは、「ここで提供したいのは、どこのお店にも負けない特徴的なコーヒーではなく、生活の延長で“ほっとできる時間”。日常の『美味しい』の中に、ちょっとだけ自分の個性が溶け込んでればいい」とやさしく、しかし力強く話してくれました。

「昔ながらのプリン」500円(税込)は、しっかり苦みがきいたカラメルと

それは、「お菓子が主役で、コーヒーが“ついで”でもいい」という言葉にも通じます。甘いものでちょっと一息つきたいというお客様の居場所でもあるために、スイーツにも妥協はなし。何度も試作をして完成した自慢のプリンやカヌレ、シフォンケーキなどの定番スイーツのほか、季節ごとのケーキもそろえます。

「実は、僕自身はあまり甘いものが得意ではないので、いくつも試食するときはなかなかに辛いです(笑)。でもきちんといいものをお届けできるよう、できるだけ手間を省かず、丁寧に作っています」。そんなふうに飾り気なく笑って見せる姿も、彼自身が楽しんでいるというなによりの証拠。

「cafe 2u」がいちばん大切にしているのは、お客様がここで過ごす時間そのもの。そのために美味しいコーヒーとスイーツを提供することが、菊池さんの役目なのです。

 

“あなた”の日常の延長に、「cafe 2u」で一息つく時間を。それだけで僕は嬉しい

店内はできるだけ自然光を取り入れ、誰もが心地よく過ごせるあたたかい空間に

知人には、「若くして夢を叶えていてすごいね」といわれることもしばしばだという菊池さん。それでも彼からは、「夢というほど、大それたものじゃない」と、やはり控えめな言葉が。

「僕、些細なことで嬉しくなったり楽しくなったりして満たされる、低燃費人間なんですよ(笑)。ラテアートを喜んでくれるお客様の表情や、美味しいの一言で幸せですし、もっといえば、ケトルを持ったりエスプレッソマシンのレバーを握ったりするだけで楽しい。今までもこれからも、自分の好きなことをかたちにしてきただけです」

誰しも、できない理由や言い訳を見つけたり、誰かと比べたりすることは簡単にできます。一方で、自分の目標に正面から向き合い、今やるべきこと、足りないピースをひとつひとつ着実に習得していくことは、意外と難しいもの。しかし、それを自分自身でこなしていくことこそが、「やりたいこと」を叶えるいちばんの近道なのだと、菊池さんの言葉が教えてくれました。

菊池さんの人生設計の中で、「cafe 2u」での時間はまだまだ始まったばかり。そしてこれからは、店を訪れるひとりひとりの“あなた”の人生にも、「cafe 2u」で過ごす時間が刻まれていくことに。今日もスカイブルーの扉の向こうで菊池さんは、“あなた”がほっと一息つける場であるために、美味しいコーヒーとおやつをそろえて待っています。

◆cafe 2u
住所:東京都中野区東中野1-52-2
TEL:03-6279-3523
営業時間:11:00〜19:00
定休日:水、第2・4木
CafeSnap みんなの投稿>>https://cafesnap.me/c/14550

取材・写真・文 RIN

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